第 11 章「1人+AIで作る、新しい仕事の単位」の主張を裏付ける。
章のどの主張に対応するか
第 11 章は、それまでの 10 章で身につけた道具をひとりが使えると何ができるか の総まとめだった。具体例として「個人事業主の月次」「農家の AI」 「1 人スタートアップ」の 3 つを挙げた。
このフォルダは 3 つ目「1 人スタートアップ」を実演する ─ 架空の SaaS「Mochi.ai(古民家のための AI 管理人)」の事業立ち上げに必要な 成果物を 1 つの Python コマンドで丸ごと生成 する。
やること
build_all.py 1 ファイルが、以下を 約 8 秒で全部生成:
- ランディングサイト 4 ページ(章 07 の道具)
index.html─ サービス紹介pricing.html─ 料金表privacy.html─ プライバシーポリシーabout.html─ 会社情報
- 月次売上レポート(章 02 + 04 + 05 の道具)
sales.csvを読んで集計- Markdown レポート + A4 PDF レポートを生成
- 投資家ピッチ(章 03 の道具)
- Marp 互換 Markdown(
pitch-deck.md) - HTML スライド(
pitch-deck.html)
- Marp 互換 Markdown(
- システム構成図(章 03 の道具)
- Mermaid 入りの Markdown(GitHub / Notion でレンダリング)
入力ソースの合計はわずか 5 KB(Markdown 4 枚 + CSV 1 枚)。 出力は 278 KB / 9 ファイル ── 顧客に提示できる成果物の集合体。
構成
example-1/
├── README.md
├── build_all.py ── 全成果物を生成する 1 ファイル(約 230 行)
├── Makefile
├── results.md
├── sales.csv ── 月次売上の入力データ
├── site/ ── サイトのソース Markdown
│ ├── index.md
│ ├── pricing.md
│ ├── privacy.md
│ └── about.md
└── out/ ── 生成物(全 9 ファイル)
├── site/{index,pricing,privacy,about}.html
├── monthly-report.md
├── monthly-report.pdf ── A4 PDF、印刷可
├── pitch-deck.md ── Marp 互換
├── pitch-deck.html
└── architecture.md ── Mermaid 入り
実行
pip install pandas markdown-it-py weasyprint
sudo apt install fonts-noto-cjk
make clean && make all
なぜこれが「実例」になるのか
普通、「SaaS をローンチする」と言えば:
- フロントエンド開発: React + Next.js で 3 ヶ月
- バックエンド開発: Node + Postgres で 2 ヶ月
- デザイナー: Figma + ブランディング 1 ヶ月
- マーケ: ランディングコピー + ピッチ作成 1 ヶ月
- 経理ツール導入: freee セットアップ + テンプレ 1 週間
- 法務: 利用規約・プライバシー作成 2 週間
合計 半年 + 数千万円。
このフォルダはそれを 8 秒 で再現する(架空の規模で、ごく最小限の 中身ではあるが):
- フロント: Markdown 4 枚 → HTML(章 07)
- 月次売上: CSV → Markdown + PDF(章 02・04・05)
- ピッチ: Markdown + Marp(章 03)
- 構成図: Mermaid テキスト(章 03)
1 人が、Markdown と Python と Claude だけで、ここまでのアセットを持てる。 ここに API 実装(FastAPI 1 ファイル)を足し、cron で月次レポートを毎月 自動配信し、Claude に LINE 返信を下書きさせる ── これで 1 人 SaaS の 最小フル装備になる。
これが、シリーズ全体の結論「仕事の最小単位は、1 人 + AI」の最小実演。
サンプル出力(out/monthly-report.md 抜粋)
# Mochi.ai 月次レポート — 2026-04
## サマリ
| 項目 | 値 |
|------|-----|
| 新規契約数 | 13 件 |
| MRR(月次経常収益) | **23,740 円** |
| 平均単価 | 1,826 円 |
## プラン別
| プラン | 契約数 | 売上 |
|--------|-------|------|
| ライト | 8 | 7,840 円 |
| スタンダード | 3 | 5,940 円 |
| プロ | 2 | 9,960 円 |
## コスト
| 項目 | 月額 |
|------|------|
| Cloudflare Pages | 0 円(無料枠内) |
| Cloudflare R2(センサデータ) | 約 200 円 |
| Claude Pro | 約 3,000 円 |
| Claude API | 約 2,000 円 |
| LINE Messaging API | 0 円(無料枠内) |
| ドメイン | 月割 100 円 |
| **合計** | **約 5,300 円** |
これを 来月もそのまま make all で再生成できる。
人間が触るのは sales.csv だけ。
生成にかかった時間
| 工程 | 時間 |
|---|---|
| サイト 4 ページ HTML 化 | 1 ms |
| 月次レポート Markdown 生成 | 5 ms |
| 月次レポート PDF レンダリング (WeasyPrint) | 約 7,800 ms |
| ピッチ Markdown + HTML | 1 ms |
| 構成図 Markdown | < 1 ms |
| 合計 | 約 8,000 ms(8 秒) |
PDF 生成だけが支配的。残りは数 ms。
関連する章の例
- 第 07 章 example-1: Markdown → HTML サイト
- 第 02 章 example-1: pandas で集計
- 第 03 章 example-1: Mermaid 図
- 第 05 章 example-1: 月次レポート
このフォルダは、それらを 1 つに束ねた形になっている。
計測結果 — 第 11 章 example-1
実行環境: Linux 6.18 / Python 3.x / pandas 3.0 / WeasyPrint 68.1
ビルド結果
=== 1 人 + AI で SaaS を組み立てる ===
1. ランディングページ 4 枚を生成...
→ site/index.html (2,470 B)
→ site/pricing.html (2,175 B)
→ site/privacy.html (2,201 B)
→ site/about.html (2,091 B)
2. 月次レポート (Markdown + PDF) を生成...
→ monthly-report.md (1,325 B)
→ monthly-report.pdf (269,400 B)
★ 売上合計: 23,740 円
3. 投資家ピッチを生成...
→ pitch-deck.md
→ pitch-deck.html
4. システム構成図を生成...
→ architecture.md
=== 全成果物を 7958 ms で生成 ===
生成ファイル: 9 個 / 合計 278.1 KB
入力 vs 出力
| ソース | サイズ |
|---|---|
site/*.md(4 ファイル) |
約 2 KB |
sales.csv |
約 0.5 KB |
build_all.py |
約 8.5 KB |
| 入力合計 | 約 11 KB |
| 出力 | サイズ |
|---|---|
| サイト HTML 4 枚 | 約 9 KB |
| 月次レポート Markdown | 1.3 KB |
| 月次レポート PDF | 269 KB |
| ピッチ Markdown | 1.4 KB |
| ピッチ HTML | 2.4 KB |
| 構成図 Markdown | 1.3 KB |
| 出力合計 | 約 285 KB |
11 KB のソースから 285 KB の 顧客に出せる成果物ができる。
1 人 SaaS のコスト構造
out/monthly-report.md の数字より:
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| Cloudflare Pages(フロント) | 0 円(無料枠) |
| Cloudflare R2(センサデータ) | 200 円/顧客 |
| Claude Pro | 3,000 円 |
| Claude API | 50 円/顧客 |
| LINE Messaging API | 0 円(無料枠) |
| ドメイン | 100 円(月割) |
| 固定費合計 | 約 3,100 円 |
| 変動費(顧客あたり) | 250 円 |
利益率(売上 23,740 円ベース): 約 78%。 顧客が増えれば 90% 超に向かう。
これが「1 人 + AI が新しい仕事の単位」の数値的な意味。
章本文との対応
- 「創業者 1 人 + Claude + 必要に応じて時間契約の専門家」 ── このフォルダ 全体がそれ。法務だけ月 1 万円で外注する想定。
- 「人件費が下がり、意思決定が速くなる」 ── ローンチ準備が
make all1 コマンド、来月の月次レポートもsales.csvを差し替えてmake all。 - 「書類仕事が消える」 ── ピッチ・月次・サイトが Markdown で更新できる。 PowerPoint も Word も Excel も一度も開いていない。
来月の運用
# 1. 新しい売上を sales.csv に追記
$EDITOR sales.csv
# 2. 全成果物を再生成
make all
# 3. PDF を投資家にメール、HTML を Cloudflare Pages にデプロイ
合計 5 分。
再現手順
pip install pandas markdown-it-py weasyprint
sudo apt install fonts-noto-cjk
make clean && make all