Structural Analysis

AIネイティブな仕事の作法

AI 時代の自由人のための道具たち。


サブシリーズ

ソフトウェア開発編 — ソフトウェア工学から、リベラルアーツへ ── 技術職の基盤転換

AIがコードを書く能力で人間トップクラスに到達した。コーダーの仕事はなくなり、判断中心のビルダーが代わりに立つ。技術職の基盤学問は、ソフトウェア工学からリベラルアーツへ。数年で完了する構造転換を、11章で追う。
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00

AIの母国語は、PythonとMarkdown形式のテキスト — 企業の事務処理はOffice、業務ソフトはJava/C#では、AIとの相性が悪い。

OpenAI も Anthropic も Python で動く。データは Markdown、JSON、YAML。AI ネイティブな道具と企業の標準的な道具のあいだに、決定的な断絶がある。Office・Java・C# からの移行はやるしかない。

01

AI(ChatGPT・Claudeなど)活用マニュアル — 普通の人のための、6 つのコツ

AIは魔法の道具ではなく「優秀な、新人の書記」。普通の人が日常で使うための 6 つのコツ ── AIを購読する、まずは頼んでみる、任せきりにしない、大事なものはインターネットに送らない、得意と苦手を知る、浮いた時間を文化・科学・現実に振り向ける。

02

処理を書く ── AIにPythonで書いてもらう — マクロ・グラフ・ピボットを Python に外部化する ── 最初にやること

Excel(と Word)に埋め込まれた マクロ・VBA・グラフ・ピボットを、Python に外部化する。これが最初にやること。AI が手伝うので、難しいことはなくなった。書く必要はない。Claude に日本語で頼めばコードが返ってくる。JupyterLab のセルで Shift+Enter、即座に結果が出る。

03

文書を書く ── Markdownという最小の選択 — 書式ではなく構造を残す

Word は書式に気を取られる。テキスト形式(Markdown / AsciiDoc / MyST / LaTeX)は構造が前に出る。日常は Markdown、技術マニュアルは AsciiDoc、計算付きレポートは MyST、印刷品質は LaTeX。AI が書くので、文法を覚える必要はない。「書く」とは形を整えることではなく、考えを構造化することだ。

04

デザインをする ── Mermaid と Claude デザインで作る — 構造図、画面、スライド、3D、CAD、可視化 ── すべてテキストから

業務でのデザイン ── 構造図、UI、スライドから、3D モデリング、CAD、データ可視化、生成 AI 画像まで ── が、テキストと AI で扱える時代になった。Mermaid / Claude デザイン / Marp / D3 / Blender / ComfyUI / CadQuery / Build123d / OpenSCAD / FreeCAD ── 学習コストが高くて諦めていた専門ツールが、AI を介すと手元に降りる。

05

データを持つ ── JSONとYAMLで考える — CSV は捨てる。階層は JSON、設定は YAML、更新は SQLite、人間が見る表は OnlyOffice、大量は Parquet

Excel の中で書式の檻に閉じ込められたデータを、構造で持つ道具立てに置き換える。CSV は捨てる ── 構造化が弱すぎて、型もスキーマも無く、Excel が黙ってデータを書き換える。代わりに、階層は JSON、設定は YAML、更新があるデータは SQLite + Python、人間が見る表は OnlyOffice、大量は Parquet + DuckDB。

06

事務処理を変える ── Officeから離れる現実的な道筋 — 効率化ではない。仕事の質と、個人の自立の話だ

Office から離れる本当の理由は、時間節約ではない。Office の中にいる限り、AI は道具のまま。中身を Markdown と JSON / SQLite と Python に降ろすと、AI が同僚になり、自分が「判断する人」に変わる。Excel に Python が「乗った」のではない、Python が Excel に幽閉された ── ベンダーに希望を託すと、利害が変わったときに人質に取られる。これは仕事の質と、個人の自立の話だ。

07

業務システムと付き合う ── 並行稼働で書き換える — 「壊すな・触るな」はもう古い

業務システムを書き換えるコストは、AI で 10 分の 1 になった。残す理由はもう無い。新しい AI ネイティブなシステムを作り、旧システムと並行稼働させ、出力を実測で突き合わせる。差分が消えたら、旧を殺す。これが新しい業務システムへの態度だ。

08

Webを作る ── HTML+CSS+JavaScriptという原点回帰 — 中身は Markdown と Mermaid。外枠だけ HTML+CSS

Web を二層に分ける。中身は Markdown と Mermaid、外枠は最小限の HTML+CSS+JavaScript、両者を Python が繋ぐ。中身を Markdown に保てば、同じデータが Web 以外の用途(PDF、印刷、AI 分析、電子書籍)にも流用できる。

09

アプリを作る ── CLIツール、Fletアプリ、Flutterアプリ — 段階的にスケールアップする三層構造

アプリを作るのに、最初から Flutter は要らない。CLI ツールで書いて動かし、画面が要るなら Flet で Python のまま GUI を作り、本格的なクロスプラットフォームが必要なら Flutter に進む。三層を段階的に登れば、リスクが小さく、AI が書きやすい。

10

組み込みを作る ── Pythonで考え、Claudeに翻訳させる — ハードウェア相手でも、思考は Python で

マイコンや IoT デバイスは C や C++ で書く必要がある。しかし、設計と検証は Python で行える。Python で動かして、確かめて、それから Claude に C へ翻訳させる。これで組み込み開発の難所 ── ロジックの正しさ証明 ── が劇的に楽になる。

11

AIに任せる仕事を見極める — エージェントを自律で動かすな。AI はサンドボックスで使う

AI に任せる仕事の見極め。エージェントを自律で動かすな。Office に AI を統合する道は最も安易で最も危険。AI はサンドボックスで使う。「楽」は短期の節約、長期の依存と引き換え。AI は同僚として使う、運転は人間が握る。

12

AIで物語を検証する — AI 自身も物語に流される。だから検証の設計が要る

仕事の現場は「物語」に取り囲まれている ── 経営者の説明、ベンダーのピッチ、業界の常識、ニュース記事、政治家の言葉。情報インフラの所有者(Microsoft の GitHub・OpenAI 投資・LinkedIn・npm)が打ち出すスローガンは、AI の訓練データを通じて構造的に拡散する。AI 自身も物語に流される ── Gemini Pro が Microsoft の「ネイティブ回帰」を信じて Entity Framework Core の AOT 対応を「ほぼ完璧」と要約した実例(Microsoft 公式ドキュメントは正反対)が、それを示す。検証には、異なる手法の AI を組み合わせ、複数ベンダーで比較し、批判的な仮説をぶつけ、最後は一次情報に当たる必要がある。

13

1人+AIで作る、新しい仕事の単位 — 縦割り組織から、個人の自立へ

縦割り組織は、専門化のコストが高かった時代に生まれた合理的な構造だった。AI ネイティブな道具を揃えると、一人が領域を横断できる。経理・マーケ・法務・開発の壁が、一人の内側で溶ける。組織は消えない ── しかし縦割りが消える。個人の自立、組織の多様性、社会のレジリエンスが、ここで一本に繋がる。

道具を AI 時代に合わせれば、自分は AI 時代の自由人になる。
浮いた時間は、文化・科学・現実に向かう。

序章から始める

序章から読み始めよう。連載は書き上がり次第、順次公開していく。