第4章 / Essay
第4章 № 04 · 2026

デザインもテキストで。
MermaidClaude が生成する。

構造図、画面、スライド、3D、CAD、可視化 ── すべてテキストから

デザインを作る道具を変える。

これまで業務でデザインを作るには、PowerPoint、Visio、Figma、Sketch、Adobe XD、Canva、Photoshop ── 用途ごとに別の専用ツールが必要だった。学習コストが高く、ファイル形式が独自で、サブスクリプション料金もかかる。

時代が変わった。

デザインも、テキストから生成する。構造図は Mermaid。UI と画面は Claude デザイン。スライドも Markdown。すべての出力は、テキストかコードに源を持つ。書き換えが利き、バージョン管理ができ、AI が同僚として並走する

デザインの種類と道具

業務で「デザイン」と呼ばれる作業を整理する。

flowchart LR Intent["伝えたい意図
(言葉)"] Intent --> Mermaid["構造図
Mermaid"] Intent --> ClaudeUI["UI / 画面
Claude デザイン
(HTML+CSS)"] Intent --> Marp["スライド
Markdown + Marp"] Intent --> SVG["配布物
Claude デザイン / SVG"] Intent --> Designer["ブランディング・印刷物
専門デザイナー"] Mermaid --> Out[("PDF / HTML / PNG
(自動生成)")] ClaudeUI --> Out Marp --> Out SVG --> Out classDef tool fill:#e8f5e9,stroke:#7a9a6d,color:#3a4d34 classDef pro fill:#fef3e7,stroke:#c89559,color:#5a3f1a class Mermaid,ClaudeUI,Marp,SVG tool class Designer pro

すべてに共通するのは、最終的な PDF や PNG ではなく、その手前の「テキストとコード」を保存することだ。

構造図は Mermaid で

業務システム、組織、データの関係 ── これらの構造を伝える図は、すべて Mermaid で書ける。

graph TD
  A[ユーザー] --> B[Web サーバー]
  B --> C[(データベース)]
  B --> D[キャッシュ]
  C -.->|遅延| B

これだけで、4 つのノードと矢印の関係が表現できる。

PowerPoint で描いた図は、Word に貼り付けた瞬間に画像になり、構造を失う。動かせない。差分が見えない。Mermaid はテキストだ。Git の差分が出る、AI が読める、書き換えられる、10 年後も読める。

書ける図の種類:

GitHub、Notion、Zed など、ほとんどの場所が Mermaid をネイティブで レンダリングする。記号を覚える必要は無い。Claude に「この構造を Mermaid で書いて」と頼めば書いてくれる。読めればよい。

UI と画面は Claude デザインで

「画面の下書き」「UI モックアップ」── これまでは Figma や Sketch で作っていた。学習コストが高く、サブスクリプション必須で、デザイナーの作業領域に閉じていた。

Claude デザインで、これが変わった。

「ログインフォームを作って」と頼むと、HTML + CSS + (必要なら) JavaScript のコードが返る。ブラウザで開けば、その場で動く画面になる。「もっと洗練されたデザインで」「青基調で」「左寄せで」── 言葉で指示すれば、コードが書き換わる。

あなた: 在庫管理画面の UI を作って。商品リスト、検索ボックス、追加ボタン
Claude: (HTML+CSS が返る)
あなた: もっと余白を広く、カラムを 3 つに
Claude: (修正版が返る)

これは、Figma の代わりではない。Figma より早く、コードに直結しているので、そのまま開発に渡せる。第7章「Web を作る」の HTML+CSS+最小 JS スタックと完全に一致する。

業務でこんな使い方ができる:

専門デザイナーがいる場合は、Claude デザインで下書きを作って、デザイナーに渡す。「この方向で、もう少し洗練して」と頼める。デザイナーの時間が「ブランド統一」「印刷物精度」「写真選定」── 専門性が要る部分に集中する。

スライドも Markdown で

プレゼン資料も、Markdown で書く。

Marpreveal.js というツールが、Markdown を HTML スライドに変換する。スライド 1 枚 = Markdown の --- 区切り。

# AI ネイティブな仕事の作法

AI 時代の自由人のための道具たち

---

## なぜ今か

AI で道具立ての時代が変わった

---

## 結論

1 人 + AI で、仕事ができる

これで 3 枚のスライドが PDF・HTML・PNG に変換できる。

PowerPoint との比較:

複雑なレイアウトが必要なスライドだけ、Claude デザインで HTML を書いてもらう。ベースは Markdown、装飾だけ Claude

業務でのプレゼン作成が、劇的に速くなる:

AI で簡単になるもの ── 学習コストが高かった専門ツール

Mermaid・Claude デザイン・Marp は 日常のデザイン の話。ここから は、学習コストが高くて諦めていた専門ツール の話。AI が スクリプト・コード・ノード設定を書いてくれるおかげで、これらの道具 が事務職・個人事業主・現場担当者の 手元に降りてくる

初心者の方へ ── ここから先(D3 / Blender / ComfyUI / CAD)は 「あとからこんなことも可能になる」という見通しです。最初は Mermaid と Claude デザインだけで十分。日常のデザインが手元に 降りてきてから、必要に応じてこの節に戻ってきてください。 「読める能力」さえあれば、いつでも入れる

flowchart LR Intent2["やりたいこと
(言葉で説明)"] Intent2 --> D3["インタラクティブな
データ可視化
D3.js"] Intent2 --> Blender["3D モデリング・
アニメーション
Blender (bpy)"] Intent2 --> Comfy["生成 AI 画像/動画
ComfyUI
(JSON ワークフロー)"] Intent2 --> CAD["機械設計・
3D プリント
CadQuery / Build123d
OpenSCAD / FreeCAD"] D3 -.-> Out2[("HTML / SVG / PNG /
STL / glTF / 動画")] Blender -.-> Out2 Comfy -.-> Out2 CAD -.-> Out2 classDef advanced fill:#fef9e7,stroke:#c8a559,color:#5a4a1a class D3,Blender,Comfy,CAD advanced

四つに共通するのは、全部がスクリプト/コード/JSON で動かせる こと。 AI がその「言語」を書ける。だから、GUI を覚える必要が無い。

D3.js ── インタラクティブなデータ可視化

D3.js は Web ブラウザで動く可視化ライブラリ。Excel のグラフでは 描けない カスタムなインタラクティブ可視化 ── 階層ツリー、 力学グラフ、地図ベース、独自レイアウト、ホバーで反応する図、 ズームできるタイムライン ── が作れる。新聞や調査報道のあの種の 凝った図は、たいてい D3。

学習コストは非常に高い。「データバインディング」「セレクション」 という独自の概念があり、独学だと数ヶ月かかる。

AI を介すと:

あなた:この JSON を D3 で、力学グラフ(force layout)として 描いて。ノードを色分け、ホバーで情報表示、ズーム可。

Claude:(D3 のコードが返る)

Web に貼れる JavaScript が返る。D3 の文法を覚える必要は無い。 報告書、Web 公開、ダッシュボード、調査資料 ── これまで「専門の ビジュアライザー」を呼んでいた領域が、自分の手元に降りる。

第1章で扱った matplotlib / Altair は日常の集計グラフ向け、 D3 は凝った独自可視化向け ── 用途で使い分ける。

Blender ── 3D モデリングとアニメーション

Blender は無料・オープンソースの 3D 制作スイート。3D モデル、 アニメーション、レンダリング、動画編集 ── ハリウッド級の機能だが、 メニューが膨大で、ショートカットを覚えるだけで数ヶ月。

実は Blender は Python(bpy)で全機能を呼び出せる。GUI を 触らなくても、Python スクリプトで 3D シーンが組める。

AI を介すと:

あなた:Blender の Python で、立方体の上に球体を載せた図形を作って。 光源は左上、カメラは正面少し下、PNG でレンダリング。

Claude:(bpy スクリプトが返る)

業務での用途:

ComfyUI ── ノード式 AI 画像/動画生成

ComfyUI は、Stable Diffusion 等の生成 AI を ノードを繋ぐ形 で 扱うツール。プロンプトを書いて生成するだけでなく、複数モデルの 組み合わせ・条件付き生成・動画生成・キャラの一貫性維持 ── 高度な ワークフローを組める。

ノードを手で繋ぐと迷子になる。ワークフローは JSON ファイルで、 直接書くのは辛い。

AI を介すと:

あなた:商品写真を入力に、背景を白に置換、ロゴを右下に重ねる ComfyUI ワークフローを JSON で。

Claude:(ワークフロー JSON が返る)

業務での用途:

これまで 広告代理店や制作会社 に外注していた画像作りが、 手元 で完結する。ComfyUI を Web に Web UI として公開すれば、 チームでも使える。

CAD ── 機械設計・3D プリント・建築模型

機械設計の世界は 専用 CAD ソフト(SolidWorks、Inventor 等)で 動いていて、学習コストもライセンス費も高い。

しかし、スクリプト/コードで CAD を書く 選択肢がある。AI が コードを書くので、CAD の操作を覚える必要が無い。

ツール 言語 特徴
OpenSCAD 独自スクリプト言語 古参、シンプル、3D プリント界の標準の一つ
CadQuery Python Python で書ける、業界寸法の概念に親和的
Build123d Python CadQuery 系統の後継、より自然な Python 表現
FreeCAD GUI + Python フル機能のパラメトリック CAD、Python で操作可

例:Build123d で、ねじ穴付きのブラケットを作る。

あなた:幅 50mm × 高さ 30mm × 厚さ 3mm のブラケット。 上端から 10mm の位置に直径 4mm の穴を 2 つ、左右対称に。 Build123d で書いて。

Claude:(Python コードが返る)

これを実行すると STL ファイルが出力される。そのまま 3D プリンタ に入れて部品が刷れる

業務での用途:

組み込み(第9章)と組み合わせると、ハードウェアを自分で設計 して、自分で 3D プリントして、自分で制御コードを書く ── これ までは大組織しかできなかった、ハードウェア製品の一人立ち上げが 現実的になる。

具体例:現場で何に使うか

抽象的な「専門ツールが手元に降りる」は、具体例で見ると分かりやすい。

事例 1:商品カタログのバリエーション(ComfyUI)

ある小売店主が、季節商品 100 種類の写真を撮った。背景が雑然と していて、Web カタログに使えない

事例 2:工場のセンサ筐体(Build123d + 3D プリント)

中小製造業の現場担当者が、ライン上の温度センサを保護する筐体を 作りたい。

「壊れた」「合わない」が分かったら、寸法を変えて 30 分で次の試作。 現場の人が、現場で、設計サイクルを回す。これは第12章「縦割り からの自立」の具体形。

事例 3:プロモーション動画の素材(Blender)

地域の観光協会が、移住促進の説明動画を作る。

事例 4:取材記事のインタラクティブ図(D3)

地方紙の記者が、人口減少データを記事に組み込みたい。

記者・観光協会職員・現場担当者・小売店主 ── これまで「専門の制作 会社に発注する側」だった人が、自分の手で作る側に回る

共通する原理 ── AI が「学習コストの壁」を消す

D3、Blender、ComfyUI、CAD ── これらは「学習コストが高くて触れ なかった専門ツール」だった。共通する性質はひとつ ── 全部がスクリプト/コード/JSON で動かせる

AI ネイティブな働き方は、この性質を最大限に使う。GUI を覚える のではなく、AI にコードを書かせて、結果を見て、調整する。これ までデザイナー・3D アーティスト・データビジュアライザー・機械設計 者しか触れなかった領域が、第1章「使う能力」だけを持つ人の手元 に降りてくる

専門家になる必要はない。 「専門ツールを AI と一緒に扱える人」になればいい。 これは第12章「縦割りから個人の自立へ」の具体形そのものだ。

業務資料は構造を保ったまま組み立てる

提案書、報告書、仕様書、社内文書、プレスリリース ── すべて、Markdown が本体、図は Mermaid、装飾用の絵は Claude デザインで作る。

実際の組み立て方:

articles/proposal-2026/
  ├── ja.md              # 本文(Markdown)
  ├── architecture.mmd   # 構造図(Mermaid)
  ├── ui-mockup.html     # 画面例(Claude デザインの出力)
  └── cover.svg          # 表紙(SVG)

これを Python が PDF に組み立てる(pandocweasyprint が使える)。各構成要素は独立しており、それぞれ別の用途にも使える:

「デザイン」と「中身」が分離されている。書き換えが地獄にならない。一箇所を直せば、すべての出力に反映される。これは第7章「Web を作る」で見た「中身は Markdown+Mermaid、外枠だけ HTML/CSS」の原則と完全に一致する。

デザイナーとの分業も変わる

Claude デザインで何でも作れる、というわけではない。本格的なブランディング、複雑な印刷物、写真撮影を含むビジュアル制作 ── これらは専門デザイナーの領域だ。

しかし、自分側で下書きまで作れることで、デザイナーとの分業が変わる。

これまで:

これから:

デザイナーの専門性が、本当に専門性が要る部分に集中する。下書きの段階で時間を使わない。これは第6章で見た「業務システムの書き換えを下請けに出さない、現場 + Claude で完結する」と同じ流れだ。現場が下書きを作る、専門家は仕上げに集中する

描く必要すらない

ここまでの話に共通するのは、人間が「描く」必要がほぼないということだ。

人間がやるのは、意図を言葉にする、出てきたものを判断する、必要な修正を指示する。これだけだ。「描く」という作業は AI に渡る。「何を伝えたいか」を考える時間が増える。

デザインの記号や規則を覚えるのではなく、Claude に意図を伝える能力を持つ。これが新しいリテラシーだ。

10 年後も読める

20 年前の PowerPoint ファイルは、フォントが置換され、図形がずれ、開けないことがある。Adobe Illustrator の古い .ai 形式も、最新版で開けないことがある。Figma のデザインは、サービスが終われば消える。

Mermaid、Markdown、SVG、HTML+CSS ── これらはテキストだ。20 年前のファイルが、今のレンダラで問題なく動く。20 年後も同じだ。AI ならもっと簡単に読める

デザインも、構造で持て。

書式は表示を飾る。構造は時間を超える。

実例: 数字で見る

PowerPoint で 30 ページのスライド作成: 文章とレイアウトが混在で 4 時間。同じ内容を Marp で書くと、Markdown 30 行、ビルド 1 秒、修正は Markdown を直すだけで合計 30 分8 倍の差

UI モックアップを Figma で作成: 月額 $15、図形操作で 1 時間、開発に渡す際は画像化する(動かない)。Claude デザインで「ログインフォームを作って」と頼む: HTML+CSS が即座に返り、ブラウザで動く、そのまま開発に渡せる。サブスク料金ゼロ

Mermaid 図 1 枚の Git 差分: 1 行追加・1 行削除、レビュー 30 秒で済む。同じ変更を PowerPoint でやると、ファイル全体が "binary changed" としか見えない、レビュー不能。

20 年前の .ppt ファイル: フォント置換で図形がずれ、再現困難。同じ時代の Markdown / Mermaid ファイルは、今のレンダラで完全再現。

まとめ

デザインを作る道具を、テキスト中心に変える。

日常のデザイン:

AI で扱える専門領域:

Figma、Sketch、Adobe XD、PowerPoint、Visio、SolidWorks、Illustrator ── これらの専用ツールから離れる。代わりに、AI が書きやすいテキスト とコードで持つ。サブスク料金が消える、学習コストが下がる、書き換え が地獄でなくなる、AI が同僚として並走する。

共通する原理は一つ:GUI を覚えるのではなく、AI にコードを書かせて、 結果を見て、調整する。学習コストの壁が消える。これまで専門家しか 触れなかった領域が、第1章「使う能力」だけを持つ人の手元に降りてくる。

専門家は引き続き必要だ。だが、彼らの時間が「下書き」ではなく 「専門領域」に向くように、自分側でできることを Claude で拾う。

次の章では、データの持ち方の話に進む。Excel から JSON / YAML へ、更新があるデータは SQLite + Python、大量データは Parquet と DuckDB へ ── CSV は構造化が弱いので捨てる。


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実例

再現可能なソース・コマンド・実測結果を、別ページにまとめてある。