自立編 2-10 / Essay
自立編 2-10 № 10 · 2026

整備こそ本体
AI は最後の一手

OCR・分類・属人知の成文化 ── 散らばった・書かれていない知を、書かれた・構造化された状態へ。AI を載せなくても回収できる no-regret 投資

ここまでで、部品は揃った。土台・門番・文書・コード・メール・会議・Web・ API ── 道具は立った。だが、その上を流れる 情報そのもの は、まだ散らばっている。共有フォルダの底に沈んだファイル、紙とスキャン PDF、そして最も重いもの ── 誰かの頭の中にしかない属人知

AI を載せる前に、やることがある。載せるに値する情報を、作ることだ。

整備こそ本体、AI は最後の一手

順序を間違えてはいけない。RAG も、自前の AI も、整った情報の上にしか立たない。散らばった・書かれていない情報に、いくら賢いモデルを載せても、出てくるのはゴミだ(garbage in, garbage out)。

だから本章は、AI の前に置く。やることは三つ ── 紙を読む(OCR)、散らばりを揃える(分類・構造化)、頭の中を書き出す(属人知の成文化)

そして、この整備には、二つの性質がある。

賢いモデルより、整った情報のほうが効く。整備こそ本体。AI は、最後の一手だ。

紙を読む ── OCR

最初の関門は、これまで機械が読めなかった情報だ。紙、スキャン、画像 PDF、手書き。

# 例: スキャン PDF をテキスト層つきに(OSS OCR)
ocrmypdf --language jpn input.pdf output.pdf   # 検索可能な PDF + テキスト

出力は、Markdown とプレーンテキストに寄せる。専用フォーマットに閉じ込めない ── 後で誰でも・どの AI でも読めるように(2-04 の標準形式の原則)。

散らばりを揃える ── 分類と構造化

次に、散らばったファイルを 揃える

ここで AI は強力な助手になる。「この 200 ファイルを種類ごとに分類し、要約を付けて」── 分類も要約も、ローカルのモデル(2-11)で回せる。だが、分類の軸を決めるのは人だ。業務にとって何が「同じ種類」かは、業務を知る者にしか分からない。

頭の中を書き出す ── 属人知の成文化

最も重く、最も価値があるのが、書かれていない知だ。長年の担当者の頭の中にある、仕様の曖昧な部分、例外処理、なぜそうなっているかの理由。これが消えると、システムは「動くが、誰も分からない」状態になる(3-04 の人的依存)。

やり方は、2-09 で基幹ロジックに使ったのと同じだ ── 現場にヒアリングし、 AI に下書きさせ、現場が確認する

属人知が 書かれた瞬間、それは引き継げる資産になる。AI を載せるかどうかと無関係に、ここで会社は強くなる。

そして、AI を載せる

整った情報が揃って、はじめて次章だ。書かれた・構造化された文書を、2-02 の pgvector に埋め込み、RAG に載せる(2-11)。

整備を飛ばして RAG を組むと、出典は曖昧で、答えは当てにならない。整備を済ませてあれば、自社の実データに基づいて、出典つきで答える AI が、素直に立つ。

RAG の質は、モデルの賢さではなく、載せた情報の整い方で決まる。

まとめ

AI の前に、情報を整える。

整備は、AI を載せなくても回収できる ── 属人化が解け、引き継ぎが楽になる。 整備こそ本体。賢いモデルより、整った情報が効く

次章では、この整えた情報の上に、自前の AI を据える。


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