Claude × Debian 03

第3章 自分の環境を Claude に伝える方法

ハードウェア・ソフトウェアの情報を取り、構造化してClaudeに渡す

なぜ「環境を伝える」専用の章があるか

第2章で「文脈を渡す」ことの重要さを書いた。第3章は、その文脈のうち最も具体的な部分——ハードウェアとソフトウェアの情報——を、どう取り出して、どう整えてClaudeに渡すかを扱う。

Debianのインストールに入る前に、今使っているPCの素性を把握しておく必要がある。CPUは64ビットか、メモリは何GBか、ストレージは何で、無線LANチップは何か、入っているソフトは何か。これらが分からないと、Claudeは一般論しか返せない。

この章の終わりに、あなたの手元には my-system.md という一枚のファイルが残る。これが第4章以降の全ての議論の土台になる。

第一節 今のOSから情報を取り出す

Windowsからの情報取得

Windowsを使っているなら、PowerShell(スタート→「PowerShell」と打って起動)で次のコマンドを一つずつ実行する。

# システム情報
                Get-ComputerInfo | Select-Object CsName, CsManufacturer, CsModel, OsName, OsVersion, CsProcessors

                # メモリ総量
                (Get-CimInstance Win32_PhysicalMemory | Measure-Object Capacity -Sum).Sum / 1GB

                # ストレージ
                Get-CimInstance Win32_DiskDrive | Select-Object Model, Size, InterfaceType

                # ネットワークアダプタ
                Get-NetAdapter | Select-Object Name, InterfaceDescription, Status, LinkSpeed

                # グラフィックス
                Get-CimInstance Win32_VideoController | Select-Object Name, AdapterRAM, DriverVersion

                # インストール済みソフト(抜粋)
                Get-ItemProperty HKLM:\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall\* |
                  Select-Object DisplayName, DisplayVersion, Publisher |
                  Where-Object { $_.DisplayName -ne $null } |
                  Sort-Object DisplayName
                

macOSからの情報取得

macOSを使っているなら、ターミナル(Spotlightで「terminal」)で次を実行する。

# ハードウェア概要
                system_profiler SPHardwareDataType

                # ストレージ
                diskutil list

                # ネットワーク
                networksetup -listallhardwareports

                # アプリ一覧
                ls /Applications

                # Homebrewで入れたもの(使っていれば)
                brew list
                

Linux(既にLinuxを使っている場合)からの情報取得

既にLinuxを触っているなら、次を実行する。これらはDebianに移行後も同じコマンドだ。

# CPU
                lscpu

                # メモリ
                free -h

                # ストレージ
                lsblk -o NAME,SIZE,TYPE,MOUNTPOINT,FSTYPE

                # PCIデバイス(GPU、無線LANなど)
                lspci -nnk

                # USBデバイス
                lsusb

                # 入っているパッケージ(Debian/Ubuntu系)
                dpkg -l | awk '{print $2, $3}' | head -50

                # カーネルと発行版
                uname -a
                cat /etc/os-release
                

Claudeに聞いてみよう①:コマンド群を自分のOS向けに調整

私は現在〔Windows 11 / macOS Sonoma / Ubuntu 22.04 など〕を使っています。 この章の「環境情報を取り出すコマンド集」を、私のOSに合わせて一度に流せる形にまとめてください。 各コマンドが何を取るものかのコメントを添えてください。Claudeに渡すときに見やすいように、出力はMarkdownのコードブロックで返す形にしてください。

Claudeにコマンドを整形してもらう発想自体が、この本の流儀だ。自分で覚える必要はない。

第二節 出力から「Claudeに渡すべき部分」を選ぶ

全部渡すとノイズになる

Get-ComputerInfolspci -v の出力は、全部貼ると数百行になる。全部渡すとClaudeが迷う。渡すべきはポイントを絞った要約だ。

以下の項目を拾って、一枚のMarkdownファイルに整える。

my-system.md の骨格

# 私のシステム情報(2026-04-23 時点)

                ## 機械
                - メーカー / モデル / 年式:
                - CPU(モデル名、コア数、周波数):
                - メモリ:〇GB
                - ストレージ:〇GB(SSD/HDD、NVMe/SATA)
                - GPU:
                - ディスプレイ:解像度、内蔵/外付け
                - 無線LANチップ(Intel AX210, Realtek RTL8821CE 等):
                - Bluetooth:有/無
                - 指紋認証・顔認証:有/無、メーカー・型番
                - USB ポート構成:Type-A ×〇、Type-C ×〇、Thunderbolt 有/無

                ## 現在のOS
                - OS名・バージョン:
                - BitLocker/FileVault の有効/無効:
                - Secure Boot の有効/無効:
                - TPM:有無とバージョン

                ## 日常的に使うソフト
                - ブラウザ:
                - メール:
                - オフィス:
                - 画像編集:
                - 音楽・動画:
                - 仕事で必須のもの:

                ## 周辺機器
                - プリンタ(メーカー、モデル):
                - スキャナ:
                - ペンタブレット:
                - 外付けモニター:

                ## ネットワーク環境
                - 自宅の Wi-Fi(2.4/5/6 GHz、暗号化方式):
                - 職場の VPN の種類(もしあれば):
                - 日本語入力の現在の方法:
                

各項目に、第一節で取ったコマンドの出力から該当する情報を入れる。全項目を埋める必要はない。分からない項目は「不明」と書いておく。

「無線LANチップ」と「GPU」が特に重要

Debianインストールで最初に引っかかるのはこの二つだ。

  • 無線LANチップ:ノートPCは機種ごとに違う。Intel系はほぼ問題なく動く。Broadcomと一部Realtekはファームウェアが別途必要。
  • GPU:内蔵グラフィックス(Intel、AMD)は問題ない。NVIDIA独立GPUはドライバで少し手間がかかる。

この二つは、必ず my-system.md に書き込む。後でClaudeに「私のチップでDebianは安定しますか」と聞くと、具体的な答えが返る。

Claudeに聞いてみよう②:取った情報の整形を依頼

私のPCから次の情報を取りました。〔第一節のコマンドの出力を貼る〕

これを、私の my-system.md の骨格に整えてください: 〔上のテンプレートを貼る〕

分からない項目は「要確認」と書き、それを調べるためのコマンドを添えてください。

この一往復で、あなたの手元にシステム情報の要約ファイルができる。

第三節 Claudeにとって読みやすい書き方

Claudeが得意な形式

Claudeは次の形式を特に読みやすい。

  • Markdownの見出しと箇条書き:階層構造が明確で、どこに何があるか迷わない
  • :項目と値の対応が明確
  • コードブロック:コマンドの出力や設定ファイルは必ず ``` で囲む
  • 短い段落:一段落3〜4行まで

逆に、次は避ける。

  • スクリーンショットの画像(OCRの手間がかかる)
  • PDFの貼り付け(レイアウトが壊れて読めない)
  • 絵文字の装飾的な多用(処理コストが上がる)
  • 3000行を超える超長文(途中から注意が薄れる)

ファイル全体をまるごと渡すコツ

my-system.md のような設定ファイルやログは、Claudeに「ファイル名を明示して」渡す。

my-system.md:
                〔ファイルの中身をそのまま貼る〕
                

この書き方をすると、Claudeは「これはファイルだ」と認識して、後の対話で「my-system.md の GPU 欄を書き換えてください」のように名前で参照できる。

Claudeに聞いてみよう③:書き方そのものを検証

次の二つの書き方のどちらが、Claudeにとって扱いやすいですか。理由も添えてください。

A:「私のPCはDell Latitude 7420で、メモリは16GB、CPUはi7、ストレージは512GBのSSDで、無線はIntelの何かです」

B:

- メーカー / モデル:Dell Latitude 7420(2021)
                - CPU:Intel Core i7-1165G7(4コア8スレッド、最大4.7GHz)
                - メモリ:16GB DDR4-3200
                - ストレージ:Samsung PM981a 512GB(NVMe SSD)
                - 無線LAN:Intel Wi-Fi 6 AX201
                

Claudeは後者を推すはずだ。以降、自分もそういう書き方をする。

第四節 プライバシーを守りながら渡す

見落としがちな情報漏れ

環境情報の中には、そのままClaudeに渡すべきでないものが混じる。

  • シリアル番号:PCのシリアルは、保証や盗難対応に使える情報。渡す必要はない
  • MAC アドレス / BSSID:家の Wi-Fi のMACアドレスや BSSID は、場所特定に繋がる
  • ユーザー名を含むパスC:\Users\John_Smith\Documents\John_Smith は本名の一部
  • メールのフォルダ名:取引先名や個人名が入っていることが多い
  • ホスト名:会社名を含むことがある

渡す前に一度読み返す

コマンドの出力をコピーしたら、貼り付ける前に一度目で読む。気になる文字列があれば、[REDACTED] などに置き換える。

# 置き換え例
                ホスト名:YAMADA-LATITUDE-7420  →  [hostname]
                ユーザー名パス:C:\Users\yamada\  →  C:\Users\[user]\
                MAC:A1:B2:C3:D4:E5:F6  →  [mac]
                

これだけでClaudeの答えの質は変わらない。プライバシーは守られる。

Claudeに聞いてみよう④:情報の機微を確認

次のテキストをClaudeに渡す前に、プライバシーの観点で置き換えるべき箇所を指摘してください:

〔自分が集めた情報を貼る〕

置き換え後の推奨表記も添えてください。

Claudeに情報の機微を判断させるのは逆説的だが、実用上うまく機能する。一度この作業をすると、次回からは自分で気付くようになる。

まとめ

この章でやったこと:

  1. 現OSから環境情報を取り出すコマンドを実行した
  2. 出力から「Claudeに渡すべき要点」を選別した
  3. my-system.md に一枚にまとめた
  4. 書き方の形式(Markdown、表、コードブロック)を整えた
  5. プライバシー上問題のある情報を置換した

手元に残ったもの:

  • my-system.md(自分のシステム情報要約)
  • 第2章で作った my-claude-profile.md と並べると、あなたの「Claudeに渡すセット」が完成する

次の第4章では、この環境情報を元に、依存関係の棚卸しをする。「このソフトは何に依存しているか」「このデータは何に紐付いているか」を Claude と一緒に整理して、Windows を消す前に確認すべきものを全て洗い出す。


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Claudeはエスパーではない。

あなたのPCで何が動いているかを、Claudeに「見せる」方法が要る。その見せ方を身につけるのがこの章。一度身につけば、今後の全てのトラブル対応が速くなる。

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