危機の段階
トラブルは次の段階で深刻化する。手前で止めれば、戻すのが楽だ。
- アプリが落ちる:個別アプリの問題
- DEの一部が動かない:パネルが出ない、アイコンが動かない
- ログインできない:パスワード後に黒画面
- 起動しない:GRUBから進まない、カーネルパニック
- BIOSから先へ進まない:ハードウェア疑い
各段階で、対処の道具が違う。
第一節 アプリが落ちる
まず症状を特定
# コマンドラインから起動して、エラーメッセージを見る
アプリ名
# 例:Zed が落ちるなら
zed --foreground
# Flatpak アプリ(例: Chrome)なら
flatpak run --verbose com.google.Chrome
よくある原因
- 拡張機能の衝突 → 一個ずつ無効化
- 設定ファイルの破損 →
~/.config/<アプリ名>/をリネーム、デフォルトで起動 - メモリ不足 →
htopでメモリ残量 - GPUアクセラレーションの問題 →
--disable-gpu等のフラグ
Claudeに聞いてみよう①:アプリクラッシュの切り分け
次のアプリが起動直後に落ちます:〔アプリ名、バージョン〕
コマンドラインから起動した出力:
〔エラー全文〕原因の可能性を優先度付きで3つ挙げてください。 一つずつ試す手順を、破壊的でないものから順に。
第二節 DEの一部が動かない
症状例
- パネル/タスクバーが出ない
- アイコンをクリックしても反応しない
- アニメーションがカクつく
- 画面がちらつく
対処
# GNOMEの場合、Wayland 上で X11 キーを押せないので Tty に切り替え
# Ctrl + Alt + F3 でTTY3 にログイン
# DEを再起動
systemctl --user restart gnome-shell
# または
sudo systemctl restart gdm # GNOMEのログインマネージャ
sudo systemctl restart sddm # KDEの
sudo systemctl restart lightdm # Xfceの
セッションを捨ててやり直す
~/.config/ 内の特定アプリ設定、~/.cache/ を削除して再ログイン。設定がリセットされるが、日常業務は戻る。
第三節 ログインできない
症状:パスワード入力後、画面が真っ黒
ログインマネージャからセッションに入れない場合、多くはセッションの設定かホームの権限の問題。
対処
- Ctrl + Alt + F3 でTTY(テキストコンソール)へ
- テキストベースでログイン
~/.xsession-errorsを見る
# エラーログ確認
less ~/.xsession-errors
# ホーム直下の設定ディレクトリを疑う
ls -la ~/ | grep -E "\.(config|cache|local)"
# キャッシュクリア
rm -rf ~/.cache/*
Claudeに聞いてみよう②:ログイン不能の切り分け
Debian の GUI にログインできません。パスワード入力後、画面が真っ黒になります。 TTYには入れます。
~/.xsession-errorsの末尾:〔最後の50行〕原因と、次に試すべき手順を5つ、リスク順に提示してください。
第四節 起動しない
ここからが本番。落ち着いて、一つずつ。
GRUBが出ない、またはGRUBで止まる
BIOSから起動順序を確認。誤って別のディスクを優先にしていないか。
カーネルパニック
画面が真っ赤、または大量のエラーで止まる。
- 再起動して、GRUBメニューが出たら
eを押してエディットモード linuxで始まる行を探し、末尾にnomodesetを追加(GPU関連の問題回避)- Ctrl+X で起動
これで起動できれば、GPUドライバの問題が濃厚。sudo apt install --reinstall <該当ドライバ> を試す。
一つ前のカーネルで起動
GRUBメニューで「Advanced options for Debian」を選ぶと、過去のカーネルが並ぶ。一つ古いカーネルで起動してみる。
- 古いカーネルで起動できれば、最新カーネルの問題
- 古いカーネルも動かないなら、それ以外の問題
Claudeに聞いてみよう③:起動不能の段階的診断
Debianが起動しません。症状:
〔できれば画面を撮影した内容を文字で〕次の順で切り分けたいです: (1) BIOS の起動順序 (2) GRUB からカーネルオプションを追加(nomodeset等) (3) 一つ古いカーネルでの起動 (4) レスキューモード (5) ライブUSBからのchroot
各段階の具体的な操作と、成功判定の仕方を教えてください。
第五節 ライブUSBからのchroot復旧
起動が全く不能になったときの最終手段。
準備
- 第7章で使ったDebianインストーラのUSB(まだ持っているはず)を挿す
- UEFIでUSB起動
- インストーラの選択肢から「Rescue mode」または別PCで作った Debian Live USB
手順
# Rescueモードまたは Live USB で起動したら
# ディスクを確認
lsblk
# 暗号化されている場合は解除
sudo cryptsetup open /dev/nvme0n1p3 root_dm
# パスフレーズ入力
# 論理ボリュームを有効化(LVMの場合)
sudo vgchange -ay
# ルートをマウント
sudo mount /dev/mapper/<ルートLV> /mnt
sudo mount /dev/nvme0n1p2 /mnt/boot # /boot が別パーティションの場合
sudo mount /dev/nvme0n1p1 /mnt/boot/efi
# 必要な仮想ファイルシステムを bind
for d in dev proc sys run; do
sudo mount --bind /$d /mnt/$d
done
# chroot で本環境に入る
sudo chroot /mnt
ここから中で apt、dpkg、update-initramfs、update-grub などを叩いて復旧する。
Claudeに聞いてみよう④:chroot後の復旧コマンド
Debian Live USB から chroot で既存システムに入りました。 問題:〔カーネル更新後に起動しなくなった/GRUBが壊れた//etc/fstabを壊した〕
chroot内で実行すべき復旧コマンドを、順に示してください。 各コマンドの意味と、失敗したら次に何をするかも。
第六節 データを救う
最悪、システムを諦めて再インストールする場合でも、データは救う。
ライブUSBからのマウント
# Live USBで起動
sudo mkdir /mnt/rescue
sudo mount /dev/mapper/<ルートLV> /mnt/rescue
cd /mnt/rescue/home/<あなた>
# 外付けSSDをマウント
sudo mkdir /mnt/backup
sudo mount /dev/sdc1 /mnt/backup
# コピー
sudo rsync -av . /mnt/backup/rescued-home/
これで、OSを再インストールしてもデータは守られる。
この作業は第4章の「完全バックアップ」が事前にあれば不要。事前の備えが、いざというときの安心になる。
第七節 再インストールという選択
どうしても復旧できない場合、再インストールは失敗ではない。
第12章で dotfiles と apt-manual.txt を Git 管理にしていれば、再インストール後は:
# 新Debian で
git clone https://github.com/あなた/dotfiles.git
cd dotfiles
./install.sh
./apt-restore.sh
これで数時間で元の環境が戻る。「再インストールできる」こと自体が、Debianの強みだ。
第八節 トラブル対処の心得
冷静を保つ
パニックになると、余計に壊す。コーヒーを淹れる、深呼吸する、紙に症状を書く——数分でも離れて戻ると、見える景色が変わる。
変更は一つずつ
復旧中に「これも」「あれも」とやると、何が効いたか分からない。一つ試して、結果を見て、次に進む。
ログを取る
画面を撮影、コマンドの出力を保存、エラーメッセージをメモ。Claudeに渡す材料が、そのまま自分の将来の参考になる。
時間を区切る
「今晩で直す」と決めたら、ダメなら寝る。寝て起きると、答えが見えることが実に多い。
Claudeに聞いてみよう⑤:トラブル時のテンプレ
私は次のトラブルに遭遇しています:〔症状〕
これまで試したこと:〔箇条書き〕 現在の状況:〔箇条書き〕 手元にある道具:〔ライブUSB、別PC、スマホ、等〕
次に試すべき手順を、リスク順で3つ。各手順の所要時間の見込み、失敗時の次の一手を。 私が疲れてきたら、安全に一時停止する方法も添えてください。
まとめ
この章でやったこと:
- トラブルの五段階を分類した
- アプリ/DE/ログイン/起動/BIOS段階の対処を整理した
- ライブUSBからのchroot復旧を覚えた
- データ救出の手順を用意した
- 再インストールを最終選択として位置付けた
- トラブル時の心得(冷静・一つずつ・ログ・時間)を確認した
手元に残ったもの:
- ライブUSBと外付けSSD(常備)
- トラブル時のテンプレプロンプト
- dotfiles + apt-manual.txt による「再インストールでも戻せる」安心
次の第19章では、育てる視点に入る。目の前を回すだけでなく、あなたのDebian環境を長期的に自分色に変えていく方法を扱う。
シリーズ全体はClaudeと一緒に学ぶDebian 一覧から辿れる。コメント・議論は Facebook グループへ:AISeed — 生物多様性・食料・AIと暮らし