Claude × Debian 04

第4章 依存関係の棚卸し

Windowsを消す前に、データとサービスの繋がりを全て洗い出す

この章の目的

第1章で「何を失うか」を分類した。第3章で「私の環境」を書いた。第4章は、この二つを繋ぐ作業だ。

具体的には、「Windowsを消した瞬間に困るもの」を一つも見落とさないための棚卸しをする。ソフトウェアの動作だけではない。ログイン情報、認証アプリ、ライセンスキー、クラウドに上がっていないデータ、家族との共有、プリンタのドライバ、年賀状の住所録——普段気にしていない繋がりが、消した瞬間に顔を出す。

この章でClaudeと一緒に作るのは、依存関係マップだ。これを作っておけば、第5章以降のインストールで慌てない。

第一節 五つの依存カテゴリ

依存関係は次の五つに分ければ見落としが減る。

A. 認証と本人確認 ログインID、パスワード、二要素認証、パスキー、物理セキュリティキー、認証アプリ(Microsoft Authenticator、Google Authenticator、Authy)、スマホのSMS、物理的なICカード。

B. データ ローカル保存のファイル、クラウドに同期されているつもりでされていないファイル、メール本文、連絡先、カレンダー、ブラウザのブックマークとパスワード、チャット履歴、写真、音楽、動画、ゲームのセーブデータ。

C. ライセンスとサブスクリプション OS のライセンスキー、Office のアカウント、Adobe、Microsoft 365、クラウド系のサブスク、各種 SaaS、オフラインの業務ソフトのライセンスファイル。

D. ハードウェアとドライバ プリンタ、スキャナ、ペンタブ、特定の USB機器(業務用の計測機器、リーダーなど)、Bluetooth デバイス、ウェブカメラ、外付けのオーディオインターフェース。

E. 人との繋がり 家族との共有フォルダ、LINE のメッセージ履歴、同僚との OneDrive 共有、親戚との共有アルバム、年賀状の住所録、先代から引き継いだ何か。

Claudeに聞いてみよう①:五カテゴリの初期洗い出し

私のプロフィール(第2章で作った my-claude-profile.md)と環境情報(第3章の my-system.md)を前提に、Windows を消してDebianに移行する際、次の五カテゴリで「消す前に確認すべきもの」を具体的に列挙してください:

A. 認証と本人確認 B. データ C. ライセンスとサブスクリプション D. ハードウェアとドライバ E. 人との繋がり

各項目には「確認方法」「Debian移行後の扱い」「深刻度(高・中・低)」を添えてください。

〔ここに my-claude-profile.mdmy-system.md を貼る〕

Claudeはあなたの状況に応じたリストを返す。完全ではないが、見落としに気付くきっかけにはなる。

第二節 A:認証と本人確認の落とし穴

認証アプリは機種変更手順で扱う

Windowsに入っているPCアプリ版の認証アプリ(Microsoft Authenticator for Windowsなど)は、Debianに移行すると消える。認証コードを再設定できないと、オンラインサービスから締め出される。

対処の定石は次の通り。

1. スマホ版の認証アプリを主にする。 Microsoft Authenticator、Google Authenticator、Authy、Bitwardenはスマホで使える。PCを消しても影響が残らない。

2. パスキーを使えるサービスは、パスキーに移す。 パスキーはFIDO2対応のスマホやセキュリティキーに紐付くので、PCの OS には依存しない。

3. バックアップコードを全サービスで出力しておく。 Google、Microsoft、主要SNS、金融機関のオンライン口座、2FAを設定している全サービスで、「バックアップコード」「復旧コード」を生成して、紙に印刷するか、暗号化したファイルにして、Debianに持っていく用の場所以外に保管する。

4. 物理セキュリティキーを一本用意する価値がある。 YubiKey のようなハードウェアキーは、OSに依存しない本人確認手段だ。重要なアカウントには一本あると安心だ。

Claudeに聞いてみよう②:認証の棚卸し

私が使っている主要オンラインサービスはこれです:〔Gmail、iCloud、LINE、銀行、SNS、仕事の Microsoft 365、その他〕。

各サービスについて、(1)Windows を消した時点で認証が維持できるか、(2)維持できない場合の事前対処、(3)Debian移行後の推奨認証方式(パスキー、スマホ認証アプリ、物理キー、等)を表にしてください。

この表を埋めたら、消す前に全サービスでログインし直して、認証が通ることを確認する。これを省略すると、消した後で高確率で詰む。

第三節 B:データの完全避難

「クラウドにあるつもり」の罠

OneDrive、iCloud、Google Drive、Dropbox——どれも「クラウドに上がっているから安心」と思いがちだ。ところが次のようなケースでは、ローカルにしかないデータが残っている。

  • デスクトップやダウンロードフォルダ(同期対象外にしていた場合)
  • 一度ログインしたが、容量超過で同期が止まっているフォルダ
  • ローカルのメールクライアント(Outlookの .pst ファイル、Thunderbirdのプロファイル)
  • ゲームのセーブデータ(Steamクラウド対応でないもの)
  • ブラウザのブックマーク、パスワード、履歴(同期オフの場合)
  • ペイントソフトやDAWのプロジェクトファイル
  • 年賀状ソフト、家計簿ソフトの独自形式のデータ

棚卸しの具体的な手順

  1. C:\Users\〔あなた〕 以下を全部スキャンする Desktop, Documents, Downloads, Pictures, Videos, Music, AppData を一つずつ開いて、中身を見る。

  2. クラウド同期の状態を各サービスで確認する OneDriveの設定画面で「同期対象のフォルダ」を確認。iCloudも同様。

  3. ブラウザのプロファイルをエクスポートする Chromeの「ブックマーク」「パスワード」「オートフィル」を CSV / HTML でエクスポート。Firefoxも同様。

  4. メールのローカル保存を確認する Outlookの .pst、Thunderbirdのプロファイルフォルダ、AppleMailのメールボックス。必要に応じて外付けストレージにコピー。

  5. アプリ独自形式のデータを扱える形に変換する 可能ならCSVやJSONなど汎用形式にエクスポート。元形式のままでも保管はしておく(仮想マシンで開ける場合に備える)。

保管先は三つに分ける

避難させたデータは、次の三つに分ける。

  1. Debianに持っていく分:日常で使うデータ
  2. アーカイブ:滅多に見ないが残したいもの
  3. 破棄候補:この機会に捨てるもの

3が実は一番大事だ。移行は整理の絶好の機会。十年前の仕事のファイル、使わない画像、古いバックアップを抱えたまま新環境に持ち込むと、Debianがゴミ箱になる。

Claudeに聞いてみよう③:データ避難チェックリスト

私が使っているアプリとサービスは〔再掲〕です。これらのうち、Windows を消す前に「ローカルにしかない可能性のあるデータ」を洗い出してください。

各項目について: (1) どのフォルダまたはアプリの設定を確認するか (2) 何のファイル形式でエクスポートできるか (3) Debianで開ける形式か、仮想マシンが必要か

また、私が見落としがちな「隠れたデータ」(AppData配下、レジストリ依存のもの、等)があれば警告してください。

Claudeは意外な場所のデータを指摘してくれる。「そういえば」と思い出すきっかけになる。

第四節 C:ライセンスとサブスクリプション

整理の観点

この機会に、サブスクリプションを棚卸しする。多くの人は、使っていないサービスに年額数万円を払い続けている。

種別 Debian移行後の扱い
OSライセンス Windows 11 Pro 使わない。不要なら返金は諦める
オフィス Microsoft 365 Markdown + CSV + Python に切替で大半は不要に。提出書類に Office 形式が必要な時は OnlyOffice(予備に LibreOffice)で足りる
セキュリティ ノートン、ウイルスバスター Debianは標準で十分。解約
クラウド OneDrive有料枠 他サービスに移すか縮小
画像・動画 Adobe Creative Cloud DaVinci Resolve、GIMP、Inkscapeで代替可能か検討
特殊ソフト 会計、業務 代替を調べるか、専用機を残すか

ライセンスキーは消す前に回収する

永続ライセンス(買い切り)のソフトは、ライセンスキーを控える。多くのソフトは「インストール済みPC上のファイル」にキーが埋まっている。消したら取り戻せない。

PowerShellで古いMicrosoft製品のキーを取る一例:

(Get-WmiObject -query "select * from SoftwareLicensingService").OA3xOriginalProductKey
                

他のソフトは、ソフトごとの「ライセンス情報」メニュー、もしくはメーカーのサイトのマイページから再取得できるか確認。この作業は消す当日ではなく、一週間前までに終えておく。

Claudeに聞いてみよう④:サブスクの仕分け

私が現在払っているサブスクリプションとライセンスは以下です:〔一覧〕。

Debianに移行することを前提に、次の三つに分けてください: (1) 解約しても代替で困らない (2) 縮小プランで十分(現プランから下げる) (3) 業務上維持が必要(Debian上で動くなら続行、動かないなら別PCか代替検討)

年額の節約可能額の概算も添えてください。

節約可能額が具体的な数字で出ると、移行のモチベーションが上がる。

第四節の補:Markdown / CSV で持ち直すと、Office 自体が要らない

ここで一段踏み込む。Office を「LibreOffice で代替する」と考えるうちは、 Microsoft の世界の中でしか動けない。自分の作業領域を Markdown と CSV と Python に作り直すと、そもそも Office 系ソフトが要らない用途が ほとんどになる。

用途 旧来 AI ネイティブ
メモ・議事録 Word Markdown
提案書・報告書 Word + PowerPoint Markdown + Marp → PDF
表計算・売上集計 Excel CSV + pandas(uv 環境)
請求書 Word テンプレ Markdown テンプレ + Python(差し込み印刷)
月次レポート Excel + Word CSV → Markdown → PDF(make all 一発)
プレゼン PowerPoint Markdown + Marp
図解 PowerPoint / Visio Mermaid

提出する時だけ pandoc / OnlyOffice で .docx / .xlsx / .pdf に変換する。 入口と出口だけ Office 互換層、中身は構造化テキスト。OnlyOffice は MS Office との見た目互換性が高く、本書では第11章で互換層の代表として扱う。

具体的なコード・実測値はAIネイティブな仕事の作法 シリーズの実例集を参照(月次報告 30 秒、100 個の Excel を 0.07 秒で集計、等)。

この見立てがあれば、サブスクの仕分けで Microsoft 365 を解約 の判断が かなり通る。「Word が無いと書類が作れない」のではなく、「Word より Markdown の方が AI に渡せて検索もできて 10 年後も読める」のだから。

第五節 D・E:ハードウェアと人との繋がり

プリンタ・スキャナの確認

家庭用の主要メーカー(Canon、Epson、Brother、HP)のプリンタは、ほぼ全てLinuxドライバが提供されている。モデル名を具体的に取っておくことが重要だ。

家族との共有とやり取りの形式

家族全員がWindowsなら、共有フォルダの形式、年賀状ソフト、家計簿ソフトで擦り合わせが必要だ。自分だけDebianに移ると、家族とのやり取りが途切れる箇所が出てくる。

この章の棚卸しでは「誰と、どのソフト経由で、どの形式で」をリスト化しておく。第11章「アプリケーションの選択」で、家族との互換性を保つ方針を立てる。

Claudeに聞いてみよう⑤:ハードと人の依存マップ

私のハードウェア環境(my-system.md)と、家族・同僚との共有状況〔記述〕を前提に、Debianに移行したときに: (1) ドライバで引っかかる可能性のあるハード (2) 家族・同僚との間で共有形式の擦り合わせが必要な部分 を、それぞれ表にしてください。

第六節 一枚の依存関係マップに集約

ここまでの出力を、一枚のMarkdownファイルにまとめる。

# 私のDebian移行 依存関係マップ (2026-04-23)

                ## A. 認証と本人確認
                | 項目 | 現状 | 事前対処 | 深刻度 |
                | --- | --- | --- | --- |
                | Microsoft Authenticator PC版 | Win上 | スマホ版に一本化済 | 中 |
                | Google 2FA | スマホ | バックアップコード印刷 | 高 |
                | 銀行A パスキー | Win+顔認証 | スマホパスキーに追加済 | 高 |

                ## B. データ
                | 項目 | 現在地 | 移動先 | ステータス |
                | --- | --- | --- | --- |
                | 仕事用ドキュメント | OneDrive | そのまま(Debianでもアクセス可) | OK |
                | 写真(2015-2020) | Cドライブ | 外付けSSDに移動後、Debianへ | 要作業 |
                | Outlookメール(.pst) | Cドライブ | Thunderbirdに移行予定 | 要作業 |

                ## C. ライセンス・サブスク
                ## D. ハードウェア
                ## E. 人との繋がり

                ## 移行実行の前提条件(Go/No-Go)
                - [ ] A の「深刻度:高」が全てクリア
                - [ ] B のデータ避難が完了
                - [ ] 外付けSSDにバックアップ取得済み
                - [ ] 古いPCまたはWindowsクローンで「戻る道」を確保済み
                

最後のチェックボックスが全て埋まって初めて、第5章「インストールの全体像」に進む資格ができる。

まとめ

この章でやったこと:

  1. 五カテゴリ(認証、データ、ライセンス、ハード、人)で依存関係を棚卸し
  2. 各カテゴリの落とし穴とClaudeへの具体的な問いを実行
  3. サブスクの仕分けで実質の年額節約を可視化
  4. dependency-map.md に依存関係マップを一枚化

手元に残ったもの:

  • dependency-map.md(依存関係マップ)
  • バックアップコード、エクスポートしたブックマーク・パスワード、避難データの一式

次の第2部(第5章)は、いよいよインストールの全体像に入る。この準備編で作った三枚のドキュメント(my-claude-profile.md, my-system.md, dependency-map.md)を持って、Debianの世界に足を踏み入れる。


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抜けは、消した後に気付く。

「そういえば、あの認証アプリはどこに?」——Windowsを消した瞬間に思い出しても遅い。この章の棚卸しを丁寧にやれば、後の章で一度も慌てずに済む。

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