まず Flatpak を入れる
カテゴリごとの置き換えに入る前に、Flatpak を導入しておく。
Debian の apt だけでは、デスクトップアプリで困る場面が必ず出てくる。
なぜ apt だけでは足りないか
Debian は安定性を最優先するディストリビューションで、apt が提供する
パッケージは 古めだが堅い。これはサーバーや基盤ソフトには嬉しいが、
デスクトップアプリには逆風になることがある。
- Slack / Zoom / Discord / Spotify: 公式 deb はあるが配布が遅れがち、 自動更新が信頼しづらい
- Bitwarden / Signal / Element: deb 提供はあるが、Flatpak 版のほうが 常に最新
- OBS Studio / Krita / Inkscape: apt 版は数バージョン古い、 最新機能を使うなら Flatpak が現実的
- GIMP: Debian の apt は安定版だが、Flatpak は次期版を含む
要するに、Debian の apt は OS 基盤と "成熟したアプリ" を扱い、
Flatpak は "更新が速いアプリ" を扱う、と役割を分けるのが現実的。
Flatpak とは何か
Flatpak は Linux 用の 配布フォーマット + サンドボックス + 自動更新 の セット。次の特徴がある。
- どのディストロでも動く: Debian / Ubuntu / Fedora / Arch のどこでも 同じファイルが動く。アプリ作者が一度ビルドすれば多くの環境に届く
- 依存ライブラリを同梱: アプリが必要とするライブラリを Runtime として バンドルし、システムの apt パッケージに干渉しない
- サンドボックス: 既定では各アプリがホームディレクトリ全体やシステムを
自由に読み書きできない。
Documents/だけ、Downloads/だけ、と権限を 絞れる - 自動更新: Flathub から各アプリの新版が出ると
flatpak updateで一括 更新される - 権限の見える化:
flatpak info --show-permissions <app>でそのアプリが 何にアクセスできるかを確認できる
すべての利点の裏返しとして、ディスクを少し多く使う(Runtime を 共有しても重複は出る)、起動が apt 版より気持ち遅い、という弱点がある。 ノート PC のディスクが残り 10 GB を切っているような状況では、Flatpak を 何でも入れる前に Runtime のサイズを意識する必要がある。
セットアップ(3 分)
# Debian 13 で
sudo apt install flatpak
# GNOME の「ソフトウェア」と統合したい場合
sudo apt install gnome-software-plugin-flatpak
# Flathub(Flatpak アプリの最大の配布元)を登録
flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
# 一度ログアウト → ログインで PATH と .desktop が反映される
これで flatpak install flathub <app-id> でほぼあらゆるデスクトップアプリが
入る。
基本のコマンド
# 検索
flatpak search slack
# インストール(Flathub 指定推奨)
flatpak install flathub com.slack.Slack
# 起動(普通はメニューから / コマンドからも可)
flatpak run com.slack.Slack
# 一覧
flatpak list
# 全部更新
flatpak update
# 削除
flatpak uninstall com.slack.Slack
# 不要 Runtime を整理
flatpak uninstall --unused
権限を絞る(Flatseal)
サンドボックスの効果を最大化するなら、Flatseal という GUI を入れる。
flatpak install flathub com.github.tchx84.Flatseal
これで各アプリが「ホームディレクトリ全部見えていいか」「ネットワーク越しに 何でも繋いでいいか」「マイクは?」を細かく設定できる。「Slack に Documents を見せる必要はない」といった判断を、後付けで適用できる。
これは Windows / macOS には標準で無い、Linux ならではの透明性 だ。
apt と Flatpak の使い分け
本書のおすすめ:
| 種類 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| Firefox | apt(firefox-esr)/ Flatpak も可 |
Debian Security Team が ESR を高頻度バックポート、ネイティブ連携が楽 |
| Chromium / Chrome / Brave / Vivaldi | Flatpak | apt は遅れがち、Chrome は deb 入れ直しが面倒、サンドボックスが追加ボーナス |
| デスクトップ環境 / フォント / IME | apt | OS 基盤、Flatpak 化しても恩恵がない |
| OnlyOffice | Flatpak | 本書のオフィス代表。MS Office との見た目互換性が高い |
| LibreOffice | apt(libreoffice libreoffice-l10n-ja) |
予備。旧形式・LibreOffice 固有機能の互換用 |
| Slack / Zoom / Discord / Spotify | Flatpak | 更新の速さ + サンドボックス |
| Bitwarden / Signal / Element | Flatpak | 同上、暗号化アプリは新しいほうが安心 |
| OBS / Krita / Inkscape / GIMP(最新) | Flatpak | apt 版だと数バージョン古い |
| 開発ツール(Python / git / Docker) | apt | サンドボックスがむしろ邪魔 |
| エディタ・IDE(Zed / Neovim / PyCharm) | Flatpak(Neovim は apt) | 詳細は第 13 章。VS Code は本書では推奨しない |
Snap には触れない
Ubuntu には Snap という似た仕組みがあるが、Debian では Flatpak が事実上の デファクト で、Snap を入れる必要はほぼ無い。本書も Snap は扱わない。 Flatpak だけ覚えれば足りる。
Claudeに聞いてみよう⓪:apt vs Flatpak の振り分け
私が Debian で使いたいアプリのリストは次の通りです: 〔アプリ名を列挙〕
それぞれを apt と Flatpak のどちらで入れるべきか、推奨と根拠を 表で出してください。Flatpak の場合は権限で絞るべき項目(ファイル アクセス・ネットワーク・カメラなど)も提案してください。
これで準備が整った。各カテゴリの選択に進む。
カテゴリ別に置き換える
第4章で作った依存関係マップを開きながら、次の八カテゴリで置き換えを決めていく。
- ブラウザ
- メール・カレンダー
- オフィス(文書・表計算・プレゼン)
- コミュニケーション(チャット・ビデオ会議)
- 画像・動画・音声
- ファイル同期・クラウドストレージ
- パスワード管理・認証
- ユーティリティ(PDF、スクリーンショット、クリップボード)
第一節 ブラウザ
ブラウザは攻撃面が一番広いアプリで、更新の速さ がほぼそのまま安全性に 直結する。ここだけは Firefox 系と Chromium 系で扱いを変える。
Firefox は apt(firefox-esr)で十分
sudo apt install firefox-esr
Debian の Firefox-ESR は Debian Security Team が継続的にバックポート していて、 上流の Mozilla リリースとほぼ同日にセキュリティ修正が届く。Mozilla 自身も ESR を 「企業・サーバー向けの安定 + 即時セキュリティ」と公式に位置付けているので、 「Debian で apt が古い」という典型問題が起きない数少ない例外。
ネイティブメッセージング(KeePassXC / Bitwarden の連携)、YubiKey、 GNOME / KDE のデフォルトブラウザ統合 ── これらが全部素直に動く。
複数プロファイルを厳格に分離したい / 追加サンドボックスが欲しい場合は
Flatpak の org.mozilla.firefox(これも Mozilla 公式ビルド)も選べる。
Chromium 系は Flatpak が現実解
Chromium / Chrome / Brave / Vivaldi は Firefox と事情が違う。
- Chromium: Debian の apt 版は 上流ゼロデイ修正から数日〜2 週間遅れる ことがある(セキュリティチームの作業量次第)。ブラウザの 1 週間遅れは大きい
- Google Chrome: Debian の公式 apt リポジトリには無い。手段は (a) Google の
deb をダウンロード、(b) Google の apt 第三者リポジトリを追加、(c) Flatpak。
(c) が一番簡単 ── レポジトリ追加もサインキーも要らず、
flatpak install1 行で済む - Brave / Vivaldi: 公式 deb もあるが、第三者 apt リポジトリが必要。 Flatpak 版なら remote-add 不要
加えて Chromium 系は Flatpak のサンドボックスが効きやすい ── Firefox と 違ってプロセス分離は強力なものの、外側にもう一層被せると意味がある。 ブラウザは攻撃面が広いので、保険として妥当。
# 例
flatpak install flathub org.chromium.Chromium
flatpak install flathub com.google.Chrome
flatpak install flathub com.brave.Browser
flatpak install flathub com.vivaldi.Vivaldi
Flatpak ブラウザの注意点
サンドボックスの代償として、次の連携は 追加設定が要る:
- パスワードマネージャのネイティブメッセージング(KeePassXC-Browser、 Bitwarden の自動入力):portal 経由の許可が必要、初回に Flatseal で 通信ソケットを開ける
- YubiKey 等のハードウェアトークン:Flatseal で
Devices: Allを許可 - VA-API ハードウェアデコード(動画再生時の CPU 削減):環境変数の追加が apt 版より一手間多い
- 「デフォルトアプリで開く」:portal 経由になるので一瞬間が空く
「業務でパスワード管理と SSO トークンを使う」「映像編集をしながら YouTube を流す」── このあたりの頻度が高ければ apt 版(Firefox)を選ぶ価値が残る。
選ぶ軸
- ブックマークとパスワードの同期:今使っているブラウザから移行しやすいか
- プライバシー:広告・トラッカーへの態度
- Electron アプリとの統合:一部業務ツールは特定ブラウザ前提
- 更新速度 ⇒ Chromium 系なら Flatpak、Firefox なら apt-esr で十分
本書の推奨
- Firefox は
apt install firefox-esrが第一選択 - Chromium 系を使うなら Flatpak(Chrome / Chromium / Brave / Vivaldi のどれも)
- 業務 SSO 等で Chrome 必須なら、迷わず Flatpak 版の
com.google.Chrome
Claudeに聞いてみよう①:ブラウザ移行
私は現在〔Edge / Chrome / Safari〕を使っています。ブックマーク、パスワード、 拡張機能、開いているタブを、Debian の〔Firefox(apt firefox-esr) / Chrome(Flatpak)〕に移すための手順を教えてください。 データロスを最小限にするやり方と、移行後すぐに確認すべき項目を列挙して ください。あわせて、Flatpak 版を選んだ場合に Flatseal で確認すべき 権限項目(ファイルアクセス、ホームディレクトリ、ネイティブメッセージング、 デバイス、ホスト D-Bus)も挙げてください。
第二節 メール・カレンダー
候補
- Thunderbird(
sudo apt install thunderbird):老舗、機能豊富、POP/IMAP/Exchange対応 - Evolution(
sudo apt install evolution):GNOME標準、Exchange連携が比較的強い - Geary:シンプルで軽快、GNOMEに馴染む
- ウェブメール:Gmail/Outlookをブラウザで使い続ける選択肢もある
Outlook(業務用)からの移行
Microsoft 365のExchange Onlineは、IMAPまたはMicrosoft純正のEWS経由でThunderbirdから読める。会社のIT部門がIMAPを許可していれば問題なく動く。
過去メールの移行
Outlookの.pstファイルをThunderbirdにインポートするツールがある。
# ImportExportTools NG(Thunderbird拡張)
Claudeに聞いてみよう②:メールクライアントの選択
私のメール環境は:
- 仕事:〔会社ドメイン、Exchange Online/独自サーバー〕
- 個人:〔Gmail / iCloud等〕
- 過去メール:〔.pst、.mboxなど〕
最適なメールクライアントを推薦し、初期設定と過去メール移行の手順を教えてください。
第三節 オフィス——OnlyOffice + Python で完結する
本書の結論:互換層は OnlyOffice、計算は Python
筆者が実機で確認した結論を先に書く。Office 移行は OnlyOffice + Python の二本立てで、ほぼ問題なく済む。かつて「LibreOffice で互換性に泣く」と言われていた時代は終わった。
役割分担は単純だ。
- OnlyOffice:他人から受け取った
.docx/.xlsx/.pptxを見たまま開く・編集する・返すための互換層。MS Office との見た目の再現性が LibreOffice より明確に高い - Python(pandas / openpyxl / Marp / pandoc):自分の作業は Markdown と CSV と Python で回す。Excel を「アプリ」ではなく「データ形式」として扱う
第1章・第4章で書いた「Markdown と CSV を一次形式にする」方針が、第11章で具体化される、と捉えてほしい。
OnlyOffice の導入
公式の deb か Flatpak のどちらでも入る。本書は Flatpak を推奨(更新が速く、サンドボックスも効く)。
flatpak install flathub org.onlyoffice.desktopeditors
起動するだけで .docx / .xlsx / .pptx がそのまま開く。リボン UI も MS Office に近く、Windows から来た人がすぐ手を出せる。
OnlyOffice で十分なケース:
- 受領した Word を読んで、コメントを付けて返す
- 提出用の
.docx/.pptxを最終フォーマットで仕上げる - 簡単な
.xlsxを開いて値を確認・編集する - 中程度の数式・表を含む Excel ファイルの編集
OnlyOffice のマクロは JavaScript、しかもローカル実行
地味だが重要な特徴を一つ挙げる。OnlyOffice のマクロは JavaScript で書く。MS Office の VBA とは別系統だが、Web で広く使われている言語なので学習資源が桁違いに多く、Claude にも書かせやすい。
そして本書の立場で更に重要なのは、マクロがローカルで動く点だ。
- MS Office のマクロ・スクリプト機能は、近年クラウド側の API や Power Platform に寄せられ、実行に Microsoft アカウントやネット接続が前提になりつつある
- OnlyOffice のマクロは、デスクトップ版の中で完結する。ネットが切れても、Microsoft アカウントを持っていなくても動く
これは「ベンダーロックインからの距離を取る」という本書の方針(第1章)と素直に整合する。OnlyOffice 内に JavaScript で軽い自動化を仕込むのは、「Excel に VBA を書いていた領域」の自然な置き換えだ。
ただし、複雑な処理は Python で書く方が結局楽だ。JavaScript マクロは OnlyOffice の文書内で完結する世界に閉じる──そこから外(複数ファイル横断、外部 API、長期に保守するスクリプト)に踏み出した瞬間、Python のエコシステム(pandas、openpyxl、uv による隔離)の方が遥かに広い。
判断の目安:
- OnlyOffice 内の JavaScript マクロが向くケース:その文書を開いた人がワンクリックで使える簡単な処理(表の整形、合計の再計算、テンプレ挿入など)
- Python に出すべきケース:複数ファイル処理、外部データの取得、長期に育てるロジック、テストを書きたい処理
Python に寄せるケース
「自分の頭でやる作業」は OnlyOffice ではなく Python に渡す。
- 集計・分析:
pandasで CSV / Excel を読み、計算結果を CSV か Markdown で出す - 定型レポート:Markdown テンプレート+データ →
pandocで.docx、Marpで.pptx - 複雑な Excel マクロの置き換え:VBA を捨て、Python スクリプトで書き直す。翌月も翌年も同じコードで動く
- 複数ファイル横断:何十枚もの Excel を一括処理(人間が GUI で開いて回るのは時間の無駄)
uv で隔離環境を切るのが楽だ(詳細は第16章)。
uv init my-report && cd my-report
uv add pandas openpyxl
LibreOffice の位置づけ(任意)
LibreOffice は Debian の apt で入り、Writer / Calc / Impress / Draw / Base / Math が一式揃う。ただし本書では「とりあえず入れておく予備」程度の位置づけだ。
- OnlyOffice で見た目が崩れるごく稀な PDF や旧形式(.doc / .xls)を開きたい時
- LibreOffice 固有の関数で書かれた既存ファイルを開く時
- Base でローカル DB を触る時
それ以外は OnlyOffice か Python で事足りる。
「Microsoft 365 Online を持つかどうか」は別の話
クライアントが「最新の MS Office で開けるか」を契約条件にしているなら、Microsoft 365 のサブスクを最終確認用にブラウザでだけ持つ選択肢が残る。だがこれは「Debian でオフィスをどうするか」の問題ではなく「クライアント要件にどう応えるか」の問題なので、本書では深追いしない。
Claudeに聞いてみよう③:自分の Office 使用を Python 化するロードマップ
私は次の頻度でOfficeファイルを扱います:
- Word:週〇件、自作/受領、複雑度
- Excel:〇件、マクロ有無、複雑度
- PowerPoint:〇件、アニメ有無、複雑度
本書の方針(OnlyOffice + Python)に沿って、私の作業のうち: (1) OnlyOffice で開いて返すだけで済むもの (2) Markdown / CSV / Python に置き換えるべきもの (3) 当面どちらにも寄せず Microsoft 365 Online を残すもの を仕分けてください。それぞれ最初の一歩を具体的に教えてください。
第四節 コミュニケーション
候補
- Slack:公式 deb あり、または Flatpak
- Microsoft Teams:公式 Linux 版は停止、ブラウザ版を使う
- Zoom:公式 deb、動作良好
- Discord:公式 deb
- LINE:公式 Linux クライアントなし。LINE Web か 仮想マシン、もしくはスマホ主体
- Signal / Element:公式 deb
LINE問題
LINEのデスクトップ Linux 版は公式に存在しない。選択肢:
- LINE Web(ログインはQRでスマホから)
- スマホをメインにする
- Windows 仮想マシンに LINE を入れる
Claudeに聞いてみよう④:コミュニケーションの残存問題
私が使うコミュニケーションツールは〔リスト〕です。 Debianで各ツールを使う最良の方法(公式deb/Flatpak/Snap/Web版/代替)を表にしてください。 LINEなどLinux非対応のものについては、使用頻度に応じた現実的な対処を提案してください。
第五節 画像・動画・音声
画像
- GIMP:Photoshop代替
- Krita:イラスト・デジタルペイント
- Inkscape:ベクター(Illustrator代替)
- darktable / RawTherapee:RAW現像(Lightroom代替)
- Shotwell / digiKam:写真管理
動画
- DaVinci Resolve:プロ向け編集、無料版で十分。Linux版あり
- Kdenlive:オープンソース編集ソフト
- OBS Studio:配信・録画
- HandBrake:エンコード
音声
- Audacity:波形編集
- Ardour:DAW
- LMMS:作曲
Claudeに聞いてみよう⑤:クリエイティブツール
私は〔写真/動画/イラスト/音楽〕を〔頻度〕で扱います。現在使っているのは〔アプリ名〕です。 Debianでの代替を、機能互換性と学習コストの観点で評価してください。 特に、失われる機能と、代わりに得られる機能を明確にしてください。
第六節 ファイル同期・クラウド
候補
- Nextcloud:セルフホスト可能、サブスク型サービスあり(OwnCloudの分派)
- Syncthing:P2Pで複数PC間同期。サーバー不要
- Rclone:様々なクラウドストレージへのCLIツール
- OneDrive:公式Linuxクライアントなし。非公式の
onedriveCLI - Google Drive:公式Linuxクライアントなし。
rcloneか GNOME Online Accounts - Dropbox:公式Linux版あり
- MEGA:公式 Linux 版あり
本書の推奨
自宅のNASと Syncthing、または Nextcloudのサブスク。他社クラウドへの依存を減らす。
特に Syncthing はクラウド業者に依存せず、PCとスマホとNASの間で暗号化同期できる。ベンダーロックインの対極。
Claudeに聞いてみよう⑥:同期戦略
私の同期対象は〔ドキュメント、写真、コード、音楽〕で、端末は〔Debian、スマホ、家族PC〕です。 Syncthing、Nextcloud、rclone+既存クラウドのどれを主にすべきか、容量とプライバシーとコストの観点で推薦してください。
第七節 パスワード管理・認証
候補
- Bitwarden:サービス型、Linux公式クライアント、ブラウザ拡張
- KeePassXC(
sudo apt install keepassxc):ローカル保存、オープンソース - 1Password:公式Linux版あり、サブスク
セキュリティキーとの連携
Yubikeyなどのセキュリティキーは、Linuxでも問題なく動く。yubico-authenticator パッケージで OATH 対応。
Claudeに聞いてみよう⑦:パスワード管理
現在、〔Chromeのパスワードマネージャ/Apple キーチェーン/Bitwarden/その他〕を使っています。 Debian環境での最良の選択と、現在のパスワードを安全にインポート/エクスポートする手順を教えてください。
第八節 ユーティリティ
- Evince / Okular:閲覧
- Xournal++:注釈、手書き
- pdftk-java、qpdf:コマンドライン操作
- LibreOffice Draw:簡単な編集
スクリーンショット
- Flameshot:高機能、注釈付き
- GNOMEスクリーンショット/Spectacle(KDE):標準
- Shutter:豊富な機能
クリップボード履歴
- CopyQ:クロスDE対応
- KDE:標準で Klipper
- GNOME:拡張の
Clipboard Indicator
第九節 ゲーム——Steam Proton + Heroic で大半が動く
結論先出し:Linux で遊べる時代になった
「ゲームができないから Linux は無理」は、もう古い前提だ。Valve が Steam Deck のために投資してきた Proton(Wine ベースの互換レイヤー)と DXVK / VKD3D の組み合わせで、Windows 専用に作られたゲームの大半が、Debian の上で素直に動く。
本書の方針は単純だ。Flathub から Steam(と必要なら Heroic)を入れて、互換レイヤーに全部任せる。Linux ネイティブ版を探す手間は要らない。
Steam の導入
flatpak install flathub com.valvesoftware.Steam
起動して Steam アカウントでログインすると、ライブラリの Windows 専用タイトルにも「インストール」ボタンが出る。設定 → 互換性 → 「すべてのタイトルで Steam Play を有効化」 にチェックを入れると、Proton が裏で透過的に走る。
ハードウェア前提:
- Intel / AMD 内蔵 GPU:Debian 標準の Mesa ドライバで素直に動く。追加作業ほぼ無し
- NVIDIA 独立 GPU:
nvidia-driverを入れる(第8章既出)。Proton + NVIDIA は近年安定した
Steam 以外(Epic / GOG)は Heroic
Epic Games、GOG、Amazon Games のライブラリも遊びたいなら Heroic Games Launcher を足す。
flatpak install flathub com.heroicgameslauncher.hgl
Heroic も内部で Proton(または Wine-GE)を使う。Epic のアカウントでログインすれば、購入済みタイトルが Steam と同じ感覚でインストールできる。
動く/動かないの線引き
ここは正直に書く。「全部動く」とは言わない。
- ほぼ確実に動く:シングルプレイヤーの AAA(Cyberpunk 2077、Elden Ring、Baldur's Gate 3 など)、Valve のタイトル全般、インディー、Steam Deck 互換マーク(Verified / Playable)付きのタイトル
- 動くが調整が要る:MOD を大量に入れる構成、古い DirectX 9 以前のタイトル、一部の DRM 付きランチャ独自配信
- 基本的に動かない:カーネルレベルのアンチチートを要求するオンラインタイトル——Valorant、Fortnite、最近の Call of Duty、PUBG など。これらは Linux クライアントを蹴る仕様になっており、互換レイヤーで突破するべきものではない
事前確認は protondb.com で。タイトル名を入れると、実際のユーザーが動作状況(Platinum / Gold / Silver / Bronze / Borked)を投稿しているので、買う前に判定できる。
仕事用ユーザーと遊び用ユーザーを分ける——Linux ならではの解
ここで Linux の本領を一つ書く。Unix の伝統で、一台のマシンに複数ユーザーを作って完全に分離できる。これは Windows の「ユーザー切り替え」より遥かに堅い分離だ。
taro-work:仕事用。Steam も入れない。デスクトップに余計なものを置かない。仕事のホームディレクトリ・dotfiles・git 鍵だけtaro-game:遊び用。Steam・Heroic を入れる。仕事用のファイルは見えない
ログイン画面でユーザーを切り替えるだけで、「仕事モード」と「遊びモード」が物理的に切り替わる。同じ PC が二台あるかのように使える。
# 遊び用ユーザーを追加
sudo adduser taro-game
# 必要なら sudo グループには入れない(遊び用には管理権限を渡さない)
利点は具体的だ:
- 誤爆防止:仕事の Slack を見ながら Steam を起動してしまう、といった事故が起きない
- 依存関係の隔離:ゲーム用に入れた Wine 拡張や奇妙な Flatpak が、仕事用の環境を汚さない
- 時間の区切り:「ログアウトしてゲーム用ユーザーに入る」のひと手間が、無意識のながらゲームを止めるブレーキになる
- 共有 PC として使える:子供にゲーム用ユーザーだけ渡す、家族でアカウントを分ける、なども自然
Windows ではここまで綺麗な分離は難しい。「仕事のために PC を分ける必要がない」——これは Linux に乗り換えて初めて気付く実利の一つだ。
ゲーム特化ディストロ(Bazzite 等)を使うか
Bazzite のようなゲーム特化ディストロもある。Steam Deck の OS を据置機にも持ってきた構成で、確かに「起動したら遊べる」体験は速い。
ただし本書の立場は明確だ。Debian 13 を仕事の主機として保ち、ゲームはその上で遊ぶ。仕事の生産性を犠牲にしてまでゲーム特化ディストロに乗り換えるのは本末転倒だ。Debian で Flatpak の Steam を入れるだけで、Bazzite との差は「起動直後の体験が少し違う」程度に縮まる。
諦めるゲームがあったときの判断
カーネルアンチチート系の数タイトルだけのために Windows を維持するか。本書の答えはノー:
- その数タイトルを諦める——他に遊ぶものはいくらでもある
- コンソールに逃がす——PS5 / Switch / Xbox に同タイトルがあるなら、そっちで遊ぶ
- 古い Win11 機を「ゲーム専用」として残す——ネットから切り離し、Steam とそのゲームだけ入れた最小構成で寝かす(第1章 A カテゴリの扱い方)
主機 PC が Windows でなくてはならない理由には、ほぼならない。
Claudeに聞いてみよう⑧:自分のゲームライブラリ判定
私が遊んでいる(または遊びたい)ゲームは次です:
- 〔タイトル1〕
- 〔タイトル2〕
- 〔タイトル3〕
各タイトルについて、Debian + Steam Proton(または Heroic)で: (1) 動作見込み(ProtonDB の評価傾向を踏まえて) (2) カーネルアンチチートの有無と Linux 対応の見通し (3) 代替・回避策(コンソール版、類似タイトル等) を整理してください。
第十節 移行のペース
一度に全部移行しない。次の順で進める。
一日目:ブラウザ、メール、メッセンジャー(毎日必須のもの) 一週目:オフィス、クラウド同期、パスワード管理 一ヶ月目:画像・動画、ユーティリティ、ゲーム、特殊用途
優先度を付けて、焦らない。
Claudeに聞いてみよう⑨:私のアプリ移行計画
私の依存関係マップ(
dependency-map.mdの B・D カテゴリ)と使用頻度を前提に、アプリ移行のスケジュールを一日目・一週目・一ヶ月目に分けて立ててください。 各項目にリスクレベル(移行失敗の影響度)を添えてください。
まとめ
この章でやったこと:
- 九カテゴリでWindowsアプリをDebianアプリに置き換えた
- LINE、Teams、カーネルアンチチート系ゲームなど完全には置き換わらないものを正直に扱った
- ゲームは Steam Proton + Heroic で大半が動くことを確認した
- 移行ペース(一日・一週・一ヶ月)を設計した
捨てる必要があるものは、思っていたよりずっと少ない。 ブラウザ・メール・オフィス・コミュニケーション・画像動画・同期・パスワード・ユーティリティ・ゲーム——本書のスタンスを取ると、Windows でしかできないことは数えるほどしか残らない。
手元の状態:
- 日常で使えるDebianアプリ一式
- 移行計画表
次の第12章「設定の理解と管理」では、Debianの設定ファイルの場所、dotfilesの管理、バックアップ、Gitでの追跡を扱う。自分の環境をドキュメントとして残す作法を身につける。
シリーズ全体はClaudeと一緒に学ぶDebian 一覧から辿れる。コメント・議論は Facebook グループへ:AISeed — 生物多様性・食料・AIと暮らし