Claude × Debian 08

第8章 最初のトラブルシューティング

画面、Wi-Fi、音、Bluetooth、サスペンド——出がちな七つをClaudeと潰す

まず、Debian 13 では「ほぼ全部動く」

身も蓋もないことを先に書く。Debian 13(Trixie)の初回起動直後、本章で挙げる七カテゴリのうち、何も問題が出ない機種が増えている。 数年前の「ノートPCに入れたら Wi-Fi・サウンド・サスペンドのどれか必ず一つは詰まる」状態ではない。

それでも本章を残しておく理由は二つある。

  1. 当たり外れがある。新しめのチップ、独立 GPU、特殊な無線モジュールでは依然として一手間要る
  2. 動かなかった時の作法——journalctl を読む、lspci を見る、ログを Claude に渡す——は、第8章以降ずっと使い回す基礎技術だ

つまりこの章は「今あなたが詰まっている章」ではなく、「詰まったときに開く章」だ。初回起動でデスクトップが映り、Wi-Fi が繋がり、音が出て、日本語入力もできているなら、第2節以降は流し読みでよい。

「動かない」を分解する

インストール直後に「何か動かない」と感じたら、焦らず分解する。次の七つのカテゴリで、それぞれ動くか動かないかを確認する。

  1. ディスプレイ(解像度、スケーリング、外部モニター)
  2. Wi-Fi(繋がる、速度、安定性)
  3. Bluetooth(マウス、キーボード、イヤホン)
  4. サウンド(内蔵スピーカー、ヘッドフォン、マイク)
  5. サスペンド/復帰(蓋を閉じて開ける、電源の省電力)
  6. 日本語入力(Fcitx5+Mozc)
  7. 周辺機器(プリンタ、ウェブカメラ、USB機器)

Debian 13 では全部最初から動くこともある。それでも分解して確認する作法を一度通しておくと、半年後に壊れたとき自分を救える。

第一節 診断の共通作法

ログを取って渡す

Linux の強みは、何が起きているかが全部ログに残ることだ。トラブル時にClaudeに渡すべき情報は次の三種類。

1. システムログ

journalctl -b -p err        # 今回の起動以降のエラー
                journalctl -b --since "10 min ago"   # 直近10分
                

2. ハードウェア認識状況

lspci -nnk                  # PCIデバイスとドライバ
                lsusb                       # USBデバイス
                dmesg | tail -50            # カーネルメッセージ末尾
                

3. 特定サービスの状態

systemctl status <サービス名>
                systemctl --failed          # 失敗したサービス一覧
                

Claudeに聞いてみよう(定型):トラブル共通テンプレート

どのトラブルでも使える定型プロンプト。

私のDebian 13〔DE名〕で、〔症状〕が起きています。

機種:〔メーカー・モデル〕 直前にやったこと:〔操作〕

以下は私の環境の情報です:

$ uname -a
                〔出力〕
                $ lspci -nnk | grep -A 2 -i 〔関連キーワード〕
                〔出力〕
                $ journalctl -b -p err
                〔出力〕
                

原因候補を可能性の高い順に三つ挙げ、それぞれに対する確認手順を教えてください。 破壊的なコマンドは注意書きを付けてください。

このテンプレートがあると、Claudeの答えの質が跳ね上がる。

第二節 ディスプレイ系

症状:解像度が低い、文字がぼやける

多くはGPUドライバ関連。次を試す。

# 現在のドライバ確認
                lspci -nnk | grep -A 2 VGA

                # Intel / AMD は標準ドライバで動くことが多い
                # NVIDIA は独立パッケージが要る場合がある
                

NVIDIAの独立GPUの場合、non-free-firmware リポジトリから nvidia-driver を入れる。

# /etc/apt/sources.list に contrib non-free non-free-firmware が入っているか確認
                cat /etc/apt/sources.list

                # 必要なら追加(Claudeに正確な書式を聞く)
                sudo apt update
                sudo apt install nvidia-driver
                sudo reboot
                

症状:外部モニターが表示されない

# 接続されているディスプレイ
                xrandr                      # X11 の場合
                gnome-randr                 # Wayland の GNOME の場合(無ければ apt install)

                # 解像度の設定
                設定 → ディスプレイ → 配置と解像度
                

症状:HiDPI(高解像度)でUIが小さすぎる

  • GNOME:設定 → ディスプレイ → スケール 125% または 150%
  • KDE Plasma:システム設定 → 表示と監視 → グローバルスケール
  • Xfce:少し手間。Claudeにxfconf-query での設定方法を聞く

第三節 Wi-Fi とネットワーク

症状:Wi-Fiが全く繋がらない

Debian 13 の netinst ISO は non-free firmware 同梱なので、インストール直後から Wi-Fi が一度も繋がらないケースは以前より大幅に減った。それでも繋がらない場合は、極端に新しい無線チップか、ファームウェアが contrib にしかないチップの可能性がある。

# チップの型を特定
                lspci -nnk | grep -A 2 -i net

                # 認識状態とファームウェアの読み込み履歴
                dmesg | grep -iE 'firmware|wifi|wlan'
                

足りないファームウェアパッケージ(firmware-iwlwifi(Intel)、firmware-realtekfirmware-atheros など)を追加で入れる。firmware-linux-nonfree でまとめて入れる手もある。

sudo apt install firmware-linux firmware-linux-nonfree
                sudo reboot
                

症状:繋がるが遅い/切れる

2.4GHz帯が混雑している可能性。5GHz帯のSSIDがあればそちらに。省電力モードが悪さをしていることもある。

# 省電力の状況
                iw dev <インタフェース名> get power_save
                

第四節 サウンド

症状:音が出ない

# サウンドデバイスの確認
                pactl list sinks short

                # ミキサー
                pavucontrol             # GUIミキサー。無ければ apt install pavucontrol
                

よくある原因:

  • デフォルトの出力が間違っている(HDMIに出ている、ミュート)
  • ヘッドホン検出の自動切り替えが誤作動
  • Bluetoothデバイスが優先されている

症状:マイクが拾わない

pavucontrol の「入力デバイス」タブで、入力レベルをチェック。ミュートされていないか、ゲインが0になっていないか。

第五節 Bluetooth

症状:Bluetoothデバイスが見つからない

# Bluetoothサービス
                systemctl status bluetooth

                # 起動していなければ
                sudo systemctl enable --now bluetooth
                

一部のチップはファームウェアが要る。dmesg | grep -i bluetooth で確認。

第六節 サスペンド/復帰

症状:蓋を閉じて開いたら起動しない

この問題はノートPCで最も厄介。原因はカーネル・ドライバ・UEFI設定の組み合わせ。

まず試す:

  • BIOS/UEFI設定で S3 sleepModern Standby (S0ix) の切り替え(あれば)
  • GRUBのカーネルパラメータに mem_sleep_default=deep を追加

Claudeに聞いてみよう:

私の機種〔モデル〕で、サスペンドからの復帰に失敗します。 症状:蓋を閉じて5分以上経ってから開くと、画面が真っ黒のまま カーネル:〔uname -a の結果〕

試すべき手順を、効果が高い順に五つ教えてください。各手順の副作用と、戻し方も添えてください。

症状:バッテリーの減りが速い

# 電力消費の状況
                sudo apt install powertop
                sudo powertop
                

powertop --auto-tune で自動最適化を試す(ただし一部の最適化は使い勝手を下げるので注意)。

第七節 日本語入力

Fcitx5+Mozcの標準構成

sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc fcitx5-config-qt
                

インストール後、im-config -n fcitx5 を実行。再ログイン。

キーバインド:半角/全角キー、またはCtrl+Space(設定で変更可)。

症状:特定アプリで日本語入力ができない

ElectronベースのアプリやSnapパッケージは、入力メソッドの仕組みが標準と違うことがある。

Claudeに聞いてみよう:

Fcitx5+Mozc の構成で、〔アプリ名〕だけ日本語入力ができません。 起動コマンドと環境変数:〔 env | grep -i xim や GTK_IM_MODULE 等の出力〕

アプリ側で必要な環境変数、または設定を教えてください。

第八節 周辺機器

プリンタ

Debianは CUPS 経由で多くのプリンタに対応。

sudo apt install cups
                sudo systemctl enable --now cups
                

ブラウザで http://localhost:631 を開いてプリンタ追加。Canon / Epson / Brother は日本向けの別ドライバがメーカーサイトで提供されることがある。

ウェブカメラ

# 認識確認
                v4l2-ctl --list-devices

                # テスト
                sudo apt install cheese
                cheese
                

第九節 「動かない」の優先順位

複数のトラブルが同時に出ているとき、次の順で潰す。

  1. Wi-Fi(これが動かないと何も調べられない)
  2. ディスプレイ(毎日使うもの)
  3. サウンド(会議で困る)
  4. 日本語入力(日常業務の大半に影響)
  5. サスペンド/バッテリー(常用で支障)
  6. Bluetooth(無くても代替は多い)
  7. プリンタ、ウェブカメラ(必要なときに対処)

一度に全部解決しようとしない。Wi-Fiが動けば、あとはClaudeと対話しながら順に潰せる。

Claudeに聞いてみよう⑥:私のトラブル一覧を優先付け

インストール直後の今、次のトラブルが起きています:

  • 〔症状1〕
  • 〔症状2〕
  • 〔症状3〕

上記を潰していく順番と、それぞれの想定所要時間、私がまず試すべき一歩を教えてください。

第十節 トラブル解決ログを残す

潰したトラブルは、必ずテキストファイルに記録する。

# 私のDebianトラブル解決ログ

                ## 2026-04-24 Wi-Fi が繋がらなかった
                - 症状:インストール直後、Wi-Fi一覧が空
                - 原因:firmware-iwlwifi が未インストール
                - 解決:sudo apt install firmware-iwlwifi; sudo reboot
                - 参考:Claudeとの対話(保存先:〇〇)

                ## 2026-04-25 蓋を閉じて開くと画面が真っ黒
                - 症状:サスペンド復帰失敗
                - 原因:Modern Standby と Linux の相性
                - 解決:BIOS で「Linux」モードに変更 + GRUB に mem_sleep_default=deep
                

このログが、将来あなたを助ける。同じ問題が再発したとき、同じ問題を他の人に相談されたとき、再インストールするとき。

まとめ

この章でやったこと:

  1. 共通の診断コマンド(journalctl, lspci, dmesg)を身につけた
  2. ディスプレイ、Wi-Fi、音、Bluetooth、サスペンド、日本語入力、周辺機器の代表的トラブルを押さえた
  3. 優先順位で潰していく作法を確立した
  4. troubleshooting-log.md を作った

手元の状態:

  • 日常で使えるDebian環境
  • 躓いたときの自分専用のログ

ここで第2部(インストール)が終わる。次の第3部(第9〜12章)では、日常環境の構築に入る。デスクトップ環境の深い使いこなし、日本語入力の仕上げ、日常アプリケーションの選択、設定ファイルの管理を Claude と一緒に進める。


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全部動かないのではない。一つずつ動かす。

インストール直後に「なんか全部変」と感じても、冷静に一つずつ分解すれば、動かないのは2〜3個だけ。この章で、分解と対処の作法を身につける。

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